労作展

2022年度労作展 受賞作品

美術科

僕らの舎(ぼくらのいえ)

2年T.Y君

 昨年初めての労作展が終わり、二年生の労作展の題材について悩んでいた。そんな時に、母の提案で、今年二月に世田谷美術館で開催されていたグランマ・モーゼス展を観に行った。そこで観た、グランマ・モーゼスの「人が中心のほのぼのとした絵」に惹かれて、油絵に挑戦してみようと決めた。
 そして、油絵の鑑賞の仕方がわからないという人でも、身近なものの絵なら楽しんでもらえると思い、題材に普通部の校舎を選んだ。完成した絵には 「僕らの舎」 という題名を付けた。「ぼくらのしゃ」ではなく「ぼくらのいえ」 と読む。なぜ「舎(いえ)」と読ませたのかというと、普通部の校舎は校舎でもあるけれど、普通部生が共に学び生活する場でもある。校舎でありながら僕らの家のような存在の普通部に当てはまるぴったりな言葉だと思ったからだ。
 油絵はほとんど初めてで、油絵具やイーゼルなどを揃えることから始まった。油絵に関する動画や本を参考にし、下書きをしてからキャンバスに色を付け始める。
 僕は制作前から誰もやっていないような工夫をしたいと考えていた。これは僕の三年間の労作展での目標でもある。昨年は新聞紙で福沢先生の像を制作した。この時も誰もやったことのない、自分オリジナルの作品にこだわっていたと思う。そこで今年はオリジナルの、普通部通りのアーチを模した額縁も制作することにした。工房で仮額縁に貼り付ける木材を、事前に指定した大きさに切ってもらった。油絵を描きながら、額縁にも着色したりと忙しくなってしまったが、自分のイメージしたものを制作することに喜びを感じていた。
 「僕らの舎いえ」という作品は、シンプルな筆致だが、構図・色合いなど様々なことに配慮しながら描いた。普通部は空中廊下や大きな窓が多いため、ガラスを描くことがしばしばあった。ガラスに透明感を持たせるように描くのが難しい。明るく開放感のある普通部の校舎を表現するのに試行錯誤し、ガラス扉には作った絵の具に多めのオイルで薄めて塗ったり、空中廊下には光の反射を描かず、あえて奥の景色のみを描いたりと、描き方を模索しながらの制作だった。また、グランマ・モーゼスのような、温かみのある、イラスト調の人々を普通部生にして描いてみたいという思いから、本作品には普通部と先生たちを登場させた。自分の自由なアイディアを活かせた労作展だったと思う。絵を描くことは昔から好きだったので、描いていてとても楽しかったのだが、苦労した場面もあった。例えば作品を「どこで完成にするか」だ。油絵に限らず、労作展で制作する作品は、自分オリジナルなもので、どこにも作り方は載っていなければ完成も無い。そのため自分で納得するまで制作し、自分で完成ラインを設定する必要があると思う。絵を描く中で、自分が満足したら次に行こうと決め、自分のイメージを大事にしながら描けたと思う。
 油絵は毎年挑戦する人がいる定番の作品だが、多くの人に楽しんでもらえるような工夫として今回は額縁を、普通部通りのアーチにした。観る人が楽しめるような工夫をすることは同時に、自分の作品をより豊かにしてくれるのだと感じた。労作展はいつも何か大切なことを教えてくれる。来年は最後の労作展だ。集大成にふさわしい作品を作れるように頑張りたい。来年の労作展はどんな事を教えてくれるのか楽しみだ。