労作展

2021年度 受賞作品

英語科

小説 The Kingdom of Blazing Blue & Forlia旅案内

2年S.E君

 普通部に入学してまだ間もなかった二〇二〇年の六月。 労作展を僅か三か月後に控え、 小説 『The Sword of Unity』 の執筆は始まった。 外国の長編ファンタジーを好んで読んできた僕が初めて 「書く」 立場を経験した第一巻は、 試行錯誤と執筆に費やした夏休みの末、 幸いにも受賞する事ができた。
 次回の労作展では、 その続編である第二巻に取り組むと心に決めた僕だったが、 一つ大きな悩みにぶつかった。 物語の続きを書きたい一方、 労作展の作品としては、 単に 「昨年の続きを書いた」 のみでは不十分な気がしたのだ。 それに、 これから約一年、 合計何百時間という作業時間を費やすならば、 一年前に比べ、 何かが成長した作品を生み出したい思いもあった。
 まずは、 具体的にどうすればよいかを探るため、 第一巻を読み返した。 すると意外な程、 文法のミスや文の不自然さが目に付いた事に加え、 ストーリー上の矛盾も見つかった。 書いている時には気づかなかったこれらの問題点が、 読み返した時には簡単に見えてきたのは、 執筆から少し時間が経ち、 客観的に物語を見られるようになっていたからかもしれない。
 一巻を振り返る中で自覚した最大の課題は、 「物語が深みに欠ける」 という事だった。 読者を飽きさせないために、 ストーリー展開のテンポを重視するあまり、 一つ一つの場面の内容が薄く、 結果として小説全体も中途半端な仕上がりになってしまっていた。 そこで二巻の執筆においては、 場面展開を急ぐよりも、 物語の深みを重視し、 各場面を丁寧に描いていく事にした。
 一巻では、 物語の世界である Forlia の地を主人公らが転々と旅していくのに対して、 二巻では、 その舞台を旅の目的地の一つであるドワーフの王国に固定する事とした。 王国の地理や都市の構造、 そしてドワーフという種族の性格も細かく設定し、 描写に力を入れた。
 また、 一巻では、 主人公たちが小・中規模の 「事件」 に次々と遭遇していくのに対し、 二巻では戦争という一つの 「大事件」 を作品の中核にした。 その中で 「自国優先」 や 「他国との協調」 など、 現代社会にもつながるテーマに触れ、 メッセージ性のある物語を目指した。
 深みと丁寧さを心掛けた今回の執筆においては、 何ページにも渡り、 削って書き直す事も珍しくなく、 逆に単語一つ一つ、 変わっても気づかれないような細かい修正にも時間をかけた。 作業時間が限られている事を考えれば少しこだわりすぎたかもしれないが、 仕上がった作品を見ると、 未だ直し足りず、 こだわり過ぎくらいでちょうど良いと思った。
 また、 今回小説以外の新たな挑戦として取り組んだのが、 物語の世界を文と絵で紹介する 『The Guide to Forlia』 だ。 労作展当日に僕の小説を手に取ってくれる人がいても、 ひたすらアルファベットが並ぶページをパラパラと見ただけで伝わってくるものはきっと少ない。 そこで、 視覚的に、 物語の世界を旅する感覚で体感してもらうツールとしてこのガイドブックを制作した。 その作業過程では、 一巻を書いた際にはまだあいまいだった歴史的・地理的背景や、 その他の設定を細かく考える事ができ、 自分の中でストーリーがより具体的になった。 三巻を書く際にはこれを活かしたいと思う。
 こうして様々な事にチャレンジし、 こだわり抜いた事で、 作品が全て完成した時には、 やり切ったという達成感を覚える事が出来た。 そして僕にとっては、 これこそが労作展の魅力だ。 自らが選んだテーマに挑戦し、 没頭できる場を与えられ、 中学生である僕達は、 失敗を恐れず伸び伸びとチャレンジができる。 そして努力の先には、 大きな達成感が待っている。
 来年の労作展は、 いよいよこれまでの集大成となる。 全力で取り組み、 最後の労作展として、 悔いのない作品を残したい。