労作展

2021年度 受賞作品

技術家庭科

集積 〜一針一針の軌跡〜 その2

3年O.N君

 「僕には無理だ」 それが初めて労作展を訪れた小学生の僕の感想だった。 労作展に惹かれ普通部に入学する人も多いと聞くが、 力作の数々に僕は終始呆気に取られていただけだった。
 右も左も分からなかった一年目、 テーマが自由だからこそ悩んだ。 あれこれ考えを巡らせ、 二年前亡くなった大好きな曾祖父の着物を僕が着られるシャツにリメイクすることに決めた。 裁縫初心者の僕は当然、 悪戦苦闘したのだが、 着物の資料を集めるうちに高祖父から使われていた大切な着物であることが分かった。 会ったことのない高祖父と僕が一枚の着物を通して繋がったことに不思議な感覚を覚えた。 また、 祖母から裁縫を教わる中で先代たちの話を聞くことができた。 コロナ禍でまだ実現していないが、 いつか豊田市民芸館や豊田市中央図書館を訪ねて高祖父の研究やコレクションについて学んでみたいと思った。
 リメイクの魅力を知った二年目、 また裁縫の力で使わなくなったものを思い出と共に使えるものとして残したいと思った。 そこで、 二年掛かりでパッチワークのベットカバー作りに挑戦することにした。 使わなくなった服やハンカチなどを集めて三センチ四方の端切れにするところから始めた。 デザインや色味、 キルトラインにもこだわり 「集積の美」 を目指した。 端切れは一〇〇八個裁断し、 そのピースを九個繋いで九センチ四方の柄パーツに、 柄パーツと無地の生地を繋いでブロックに、 ブロック同士を繋いで表布を作った。 パーツ作成では縫い代の倒し方を間違えたり、 裏布が足りず接ぎ合わせたりした。 また、 縫い代が重なった部分は硬く、 キルティングでは針が曲がったり、 豆や腱鞘炎に苦しんだりした。 ひたすら根気のいる作業に何度も心が折れそうになったが、 常に 「千里の道も一歩から」 を思い浮かべてこつこつと縫った。
 引き続き挑んだ三年目、 年始から取り掛かったが 「間に合わないかもしれない」 という不安とキルト地獄に追い詰められた。 永遠に続く地道な作業に手の痛みも気持ちも限界だったが、 好きな音楽を聴いてテンションを上げ隙間時間もフル活用して一針一針積み重ねた。 昨年同様、 予想外のトラブルも生じた。 時間の経過と共にキルトラインが消えてしまったり、 バイアステープを額縁仕立てに付けられなかったり、 苦肉の策で計画変更を試みたりもした。 その道のりは幾つもの壁が立ちはだかる正に千里の道に感じた。 それでも、 小さな端切れが単純な縫い目の連続から生まれる美しい文様と共にベットカバーへと生まれ変わっていく様子は感慨深かった。
 二年間の努力と家族の思い出の端切れが詰まったベットカバーを作り終え、 しみじみ思った。 労作展には教科の枠を越えた学びや気付き、 局面打開力、 労作であるが故の達成感など成長に繋がる数多の機会が溢れていたということを。
 三年間の労作展を経験した今、 あのときピンとこなかった小学生の僕に伝えたい。 「君にも出来るよ」