労作展

2021年度 受賞作品

美術科

立体カラー切り絵で表現する龍虎図〜弱音に喝〜

3年Y.K君

 「大丈夫。 君は労作展で、 三年連続賞を取ることになるよ。」
 初めて労作展を見た小学三年生の僕に、 そう語り掛けたとしても、 不審者扱いされ、 逃げられるだけだろう。 未だに少し夢見心地だ。
 僕は三年間、 立体カラー切り絵に取り組んできた。 題材には、 一年目は 鷹と富士 二年目は 御所車に季節の花々、 三年目は 龍虎図 を選んだ。 そして、 それぞれ祖父、 祖母、 自分自身の為に制作した。
 初めて切り絵と向き合ったのは、 入学前の春休みに開催されていたSouMaの立体切り絵展だった。 どの様に作られているのか想像すらできないのだが、 一つ一つ丁寧に鑑賞していくうちに、 これなら真似できるかも、 取り入れてみたい、 という気持ちが湧いてきた。 その後、 カラー切り絵講座を体験してみると、 思いの外上手く出来、 迷いは無くなった。 これが、 二つを組み合わせた立体カラー切り絵の誕生となった。
 面白いのはここからだった。 國分先生のアドバイス通り、 下絵を描くにあたっては、 動物園等でのスケッチは勿論のこと、 日本画の秀逸作品に沢山触れることを大切にした。 すると、 例えば一年目の鷹では、 いつの時代にも似た様な構図の鷹の絵があることに気付いた。 疑問に思い調べてみると、 昔、 鷹は権威の象徴として好まれ、 御巣鷹山等の地名も、 鷹狩りにまつわる名残であることが分かった。 鷹の足に描かれている紐は 大緒 と言い、 性別や戦歴等で色や長さが違うことも知った。 もはや、 社会の領域ではあったが、 しっかり下調べすることで下絵が格段に描き易くなった。 まさに、 学問に垣根なし。 労作展にはまった瞬間であった。
 体験ものにもすっかりはまっていた僕は、 二年次には和紙染めと友禅染めを体験した。 和紙染めは、 こんな和紙があれば良いのにという不便さがきっかけでもあった。 実際に染めてみると、 これも思いの外綺麗な色に染まり、 どんな色や柄が出るか楽しくて仕方なかった。 友禅染めの技法や優美なデザインと色使いにも魅了された。 日本の伝統工芸品に触れることで、 作品作りに生かすという目的を越え、 日本に生まれたことを誇らしく感じる様にもなっていった。
 三年目は最も苦労した。 龍に惹かれていたものの、 その理解は表面的で、 龍は実在しない生き物であったからだ。 美術館や寺社巡り等下調べには膨大な時間を費した。 納得いくまでに巡った寺社は十七箇所。 御朱印集めという新たな趣味もできた。 中でも忘れられないのが、 千葉県にある飯縄寺の武志伊八郎信由作の彫刻だ。 写真で見るのと実物とでは、 まるで違っていた。 作者の気迫や熱量、 生き様、 そういったものが感じられ、 立ちすくむ程であった。
 思えば、 僕の作品作りには、 良い作品との多くの出会いが欠かせなかった。 良い物に触れることで、 面白い程次々にアイデアが湧いてくるのだ。 作品を通して作者からインスピレーションを受け取り、 それを自身の立体カラー切り絵で表現しようと試みる。 これが上手く合致した時の喜びは言葉では表せない程であった。
 こうして労作展は、 特段、 才能がある訳でもなかった僕の人生にカラー切り絵以上の豊かな彩りを与えてくれた。 好奇心の赴くままに追究できる環境、 そして温かく見守り、 努力を評価して力を伸ばして下さった先生方には、 感謝してもし切れない。 三年の時を経て今、 受験校を選ぶ眼だけはあったねと、 昔の自分に笑いかける僕がいる。