労作展

英語科

和文英訳「福澤百話」 / 一生の宝となる三年間の夏

3年K. H. 君

 初めて労作展へ行った時、展示されてあるもののレベルの高さや細かい字でびっしりと埋まっている制作日誌やレポートに驚いた。この労作展でやっていくためには、自分の好きなことで勝負するしかないと思った。小学校二、三年生の二年間、イギリスに住んでいたこともあり、英語が好きだったので英語科で勝負することにした。以前の英語科の作品のほとんどが英文和訳だ。だが、僕は日本語の文才が無いため和文英訳をやることにした。
 一年生の時は、6月から徐々に作業を始めた。選んだ本は、クリスティアーノ・ロナウドというサッカー選手の生い立ちについて書かれた180ページくらいの本だった。当時はサッカーゲームをよくやっていて、クリスティアーノ・ロナウドがとても強かったので生い立ちを知りたいと思って選んだ。始めたのが早かったことに油断し、最終的には追い込まれることになったが、ひと夏頑張ったこともあり、賞を貰うことができた。メダルを渡された時に、A先生が
「僕が知っている中で英語科だけで三年連続受賞した人はいない。」
と言っていたので、僕が初めての生徒になってやる、と決意した。
 無事に進級することができ、一学期の酷い成績と共にまた夏を迎えた。二年生の時は夏休みの後半にフィンランドの交流プログラムに参加することになっていたので、フィンランドへ行くまでに労作展を終わらせることを目標にしていた。訳した本は三国志。なぜ三国志にしたかというと、当時やっていたスマホゲームのキャラクターが三国志の英雄達だったので、この機会に三国志について少し学ぼうと思い、選んだ。しかし三国志と言っても何千ページのものから小学生向けのものまで色々とあるので、図書館で丁度良さそうな160ページのものを見つけ、同じものを通販で買った。文章は一年生の時よりも少し難しかったが、文量があまり変わらなかったので、三国志について自分でリサーチしたものを英文でまとめた。フィンランドへ行く前までに終わらせることができ、自分でもよく集中できていたと思った。その集中力もあって、二年連続で受賞することができた。ここまで来たら絶対にメダルケースを獲りに行こうと改めて決意した。
 固い決意をしていたにもかかわらず、三年目はスタートがとても遅かった。怪我のことで頭が一杯になっていた。そして、この怪我に大いに悩まされた夏だった。最後のライオンのメダル獲得は、福澤先生についての本で勝負することにした。幼稚舎の授業の教材として使っていた「福澤百話」という110ページの本にした。部屋の整理をしていたら出てきたので読んでみると、適度に難しかったので選んだ。年々文量が減っていることに不安を覚えたが、福澤百話の文章の難しさが想像を遥かに超えていたので、プラスアルファのリサーチ等を考える余裕も無かった。教材として使われているものなので、国語の教科書の様に語りかける口調や説明する口調等、様々な文章の種類があり、英語で違いを表現するのがとても難しかった。しかし、いくら難しくても簡単に賞は獲れないと思ったので、制作日誌を例年以上に丁寧に書いた。毎日結構な文章を書いていたので、合計で三冊になった。データが消えたり、終わる前にゲームをしたりと色々なことがあったけれど、最後のライオンのメダルとメダルケースを貰うことができた。
 ただ、A先生が昨年度に辞めてしまったことが残念だった。また、一度も特別展示になれなかったことが悔しかった。それでも、三年間の夏を部会と両立しながら頑張れたことが嬉しかった。メダルケースだけではなく、この経験も僕の一生の宝になると思う。高校へ行くと労作展の様な出展する機会が無いことはとても嬉しいけれど、やっぱり寂しさもどこかにある気がする。