労作展

2025年度労作展 受賞作品

美術科

三年間の軌跡

3年H.S.君

 僕はこの三年間の労作展で、いつも「誰もやらないことに挑戦したい」という思いを胸に作品作りに取り組んできた。
 一年生の頃は、賞を取りたい一心で臨んだものの、何をどう作ればよいのか、論文にすべきか作品にすべきかも分からず、手探りのスタートだった。そんな中で思いついたのが、かつて心に残ったカラフルなメキシコの木彫り人形。強い印象を残す作品にしたいという思いを込め、木を削り始めた。ところが、硬くて切れない木、作業場所の確保、材料不足など、次々と壁が立ちはだかった。少しずつ試行錯誤を重ね、ようやく形になったとき、胸の奥に温かな達成感が灯った。労作展当日、作品のそばに賞の紙を見つけた瞬間、心の底から嬉しさが込み上げた。友人たちの「すごいね」という言葉が、その努力のすべてを報いてくれた気がした。
 二年生では、さらに多くの人に驚きや感動を届けたいという気持ちで制作を始めた。何か新しい表現はないかと探しているとき、「岩絵具」という言葉が目に留まった。宝石や鉱石を砕き、動物のコラーゲンである「にかわ」と混ぜてつくる日本画の絵具。その美しさと奥深さに惹かれ、材料からすべて自分の手で生み出すことを決めた。硬い石を砕き、粉を練り、大きな和紙に描く日々。思うように進まない時間も多かったが、自然の中にある素材が絵の具となり、作品に命を吹き込むことを実感した。労作展では再び賞をいただき、特別展示にも選ばれた。あの日の教室の光景と、湧き上がる喜びは今も忘れない。
そして迎えた三年目。最後の労作展は「三年連続で賞を取る」という強い決意で臨んだ。これまでの経験に加え、自分で作った墨を使い、銀箔や金箔を取り入れるなど新たな表現にも挑戦した。仕上げが近づくにつれ、「これで本当に良いのか」「去年の方が上手に描けていたのでは」と不安が押し寄せた。それでも自分の信じる形を求めて描き続けた。
 当日、結果を目にした瞬間、静かに胸の奥が満たされた。三年連続の受賞、そして二年連続の特別展示。喜びよりも先にこみ上げたのは達成感だった。
 この三年間で学んだのは、労作とは単なる作品づくりではなく、物を作る過程の中で自分自身と向き合うことで努力の先に生まれる一瞬の輝きが、これほど心を動かすものだと知った。この経験は、これからの人生でも僕を支え続ける大切な糧になると思った。