労作展

2025年度労作展 受賞作品

理科

流体と共に三年

3年S.S.君

 普通部三年間の夏休みの思い出は、研究一色だった。いつもこんなに長い期間一つに熱中するなんてことはほとんどない。けれども、この労作展だけはまったくの別物だ。
 僕は労作展があることは知っていたが、どんなテーマを扱うかまったく決めておらず、入学してからずっと考えていた。そんなときに出会ったのが一本の動画だった。ある装置を水が流れていく様子がわかり、簡素なつくりにもかかわらず、水を止めることができる逆止弁。これに興味を持ち一年目のテーマはテスラバルブについての研究をおこなった。そして二年目は一年目に関連してテスラタービンを、三年目は、さらに複雑な遠心ポンプの研究にチャレンジした。
 まず初年度は、無我夢中にやっていたこともあり、ほとんど記憶にない。しかし、当時まったく流体の事前知識がなく、専門書を図書館で借り、夏休みの半分以上をこの習得に費やしたことがとても大変で、新しいことを知る楽しさを感じたことは鮮明に覚えている。今振り返ると、まだまだ未熟な面があったな、と思うが僕の労作展の軸になったものでもあり、とても感慨深い。
 二年目になると、先生にも積極的に相談をし、研究のアウトラインを決めることを意識した。二年目からは装置のクオリティも上がったが、うまく塩ビを切れなかったりくっつかなかったり苦労を重ねることも多かった。実験でもモーターがうまく動かず、実験結果に影響してしまうなど、うまくいかないことも多く、机上で考える理論だけではどうしようもないと思い知らされた。
 ついに三年目では、今までの知識と経験を最大限に生かし、オイラーヘッドの式を使って、理論的な数値を求めたり、パソコンで流体解析を試してみたりと挑戦を繰り返した。実験も失敗を含めて百回以上行い、すべての基準で今までを超える満足するものができた。また、当日会場で、大学で流体を研究している方とお話させていただき、データのとり方を教えてもらい、内容を読んで感心してもらったことが、今までの努力が報われた一つのようでとてもうれしかった。
 僕は三年間流体について研究し、論文のことなどもよく知ることができたと思う。ありがたいことに三年とも受賞することができ、最高の達成感を味わうことができた。でも、僕にとっての労作展はそれよりも、自分の成長の糧にできたことがメダル以上の価値があると思っている。これから何をしていくか、まだわからないけれど、この経験が自信になることは確かだ。最後に貴重な機会をつくってくれた家族と先生方にこの場を借りて感謝したい。