2023年度 目路はるか教室

2Dコース

産婦人科医療とわたしたち~継承と連携~

国家公務員共済組合連合会立川病院 産婦人科主任部長/日本産科婦人科学会 指導医・婦人科腫瘍指導医

平尾 薫丸 氏 (ヒラオ ノブマル)

 この度ははるばる立川の病院までお越し頂き誠にありがとうございます。胎児エコーは研修医が実際に身につけるのに結構時間のかかる手技ですが流石は普通部生の皆さん、短時間で着実にこなしていらっしゃいました。興味深そうに積極的な姿勢で取り組んだり、推定体重計測のみならず患者や家族に説明することまでも少し意識して頂いて、こちらも嬉しくなりました。腹腔鏡トレーニングはトラブルで台数が準備できず、個々の時間が少なく難しい印象をお持ちになられたかもしれません。ロボット手術実機については病院業務や授業時間配分との兼ね合いで電源を入れないままコントローラーに触れて頂いたり、実際の手術室の雰囲気を味わって頂くことはできましたので、少し満足頂けたのではないかと邪推しています。あと待機時間が発生してしまい、代わりに出生体重の新生児人形を抱っこして待つという、擬似パパ体験も思わぬ形でできたのはよかったのかもしれません。当日お手伝い頂いた普通部卒の茂松公樹先生をはじめ後輩の産婦人科医と準備して頂いたスタッフの皆さんに感謝申し上げます。
 世話人の阪埜先生からお声かけを頂き、真っ先に普通部一年生当時の山本道夫先生から伺った「スリーテン」や「鉱山のカナリア」の話が、30数年後に自分がコロナ禍で発生した様々な問題(トリアージ、妊婦受け入れ、緊急手術、人道的投与など)に直面したことと重なったのを思い出しました。SNSネイティヴ世代は実体験が少なく情報過多で“上には上がいるから”と自分に自信を持ちにくい傾向があるように思われます。研修医でも実際に職場に出ると学生時代とのギャップがあり自分で経験を意義づけ出来ないと成長実感につなげられないことがあります。講義では「場の倫理・個の倫理」という学生時代の苦い体験や三田評論の人材育成論考、医学における臨床研究・医療における臨床倫理ジレンマ・協働意思決定などの四方山話をさせて頂きました。裏テーマとして職業体験に絡めた潜在的応援メッセージとして伝わらないかなぁと密かに願っていた次第です。貴重な特別授業を担当させて頂き本当にありがとうございました。

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