2023年度 目路はるか教室

1Cコース

ゴルフとの出会いがもたらしたもの

慶應義塾体育会ゴルフ部 男子監督

土肥 幸児 氏 (ドヒ コウジ)

 11月のある日、曇天の袖ヶ浦カンツリークラブに学生服を纏った小さな中学生が大挙したことは、間違いなく開場以来の珍事であったと思います。コース従業員も朝からそわそわし、ゴルフ場に足を踏み入れた若い普通部生たちも緊張した面持ちで辺りをキョロキョロ見まわす光景は忘れられない思い出です。
 さて、ランドセルを置いて半年足らずの初々しい普通部生たちに「ゴルフとの出会いががもたらしたもの」という題目で語らせていただきましたが、横軸として学生時代、サラリーマン時代、そして現在の学生指導者時代とそれぞれの時代にゴルフを通して何に出会えたのかを思いのままを詳らかにしてみました。
 学生時代の括りでは、体育会のような厳しい世界から学んだこととして、「目標を見据えて地道な努力を惜しまず励行すること」を挙げましたが、効率重視が過ぎて地道な努力を時間の無駄として嫌う最近の世情に流されて欲しくないという願いを込めました。ゴルフとの出会いで体育会に進んだ私の場合は、地道な努力を続けることから忍耐力がつき、修羅場を掻い潜る粘り強さをもたらしてくれました。その後の人生で大いに役に立ったことは言うまでもありません。
 サラリーマン時代の括りでは、ゴルフと仕事は同じ思考であること、即ち「(根拠もなく)リスクと取ってはいけない」「順番を間違えてはいけない」「従って先読みする力が重要」なこと。また、普通部時代から英語をサボり続けた私の最大の試練として、海外事業部門に異動したこと、その後北米に長らく駐在した末に英語を自由に操れるようになった顛末を、夢も独り言も英語に変わった体験談として語らせてもらいました。一部を書き記しますが、とにかく正しい日本語をマスターすることが先だということ。ディズニー映画中の掛け合いをいくつも暗記し、単語を入れ替えれば幾通りもの会話例がアクセント付きで習得できること。そして副詞と形容動詞をうまく使うことなど自虐ネタを含めて披露しました。
 現在ゴルフ部監督として学生指導をする立場としては、競技に臨む姿勢やルーティーンワークの大切さ、出来ないことを繰り返し練習することは当然として、出来ることはもっと繰り返し練習することの大切さを伝えました。結びとして、
① 地道な努力(練習ぐせ):同じことを繰り返し続けて再現力を高めること
② 合理的判断力:ゴルフに審判はいないから
③ ヒトを見分ける力:ゴルフは必ず性格が出る
の3つがゴルフから得た大事なことであり、豊かな人生を歩むためにぜひ身につけて欲しいという主旨の話をさせていただきました。
 末筆ながらこのような機会を与えてくださった目路はるか教室委員会の皆さま、普通部の先生方には感謝申し上げます。また、目路はるか教室の益々のご発展を心より祈念申し上げます。

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