国語科
最高のオチ
3年Y.O.君
本を読むのが嫌いで、作文を書く時にはどうすれば字数を稼げるかを考える。そんな僕が三年連続で労作展を国語科で挑戦し、本の執筆を続けられたのは、あの一冊の本との出会いである。
一年生の夏休み前、僕はたまたま立ち寄った本屋で、たまたま手に取った星新一さんの「ボッコちゃん」を読んでみた。目次を開くと五十近くの面白そうなタイトルが「読んで!」と言わんばかりにこちらに訴えかけてきた。中でも惹かれた「おーい でてこーい」という作品を読んでいくと、素早い展開、そして何よりも予想を裏切る最後のオチ。こんなに短い文章で、読者の感情を揺さぶり、違う世界へと連れて行ってくれる。ページをめくる僕の手は止まらなくなった。他の作品を読んでみると、まったくさっきと違う題材で、世界の真反対を映し出したような舞台設定に驚かされた。そこで僕は気づいた。この作品は、最後どうやって終わるのか、と考えるが、星新一さんの作品の魅力はオチだけでなく、その世界設定にあると。全て違う話なのに、どこか一貫性があるのも不思議なポイントだ。
そして僕は短編小説の執筆を行うことを決めた。まず苦労したのは、オチである。何よりもオチが肝心だと考えて、最初にオチを考えて設定や事件を展開したが、アイデアは全く浮かんでこなかった。そこで、先に読者が惹かれるような設定を考え、その中でオチを作ることにした。話を書き進むにつれ、最後のオチへの仕込みからオチにかけて、スピード感を持たせ、オチはできるだけ簡潔に終わらせ、無駄な情報を書かない方が読者に衝撃を与え強い感情を持たせた
り、考えさせたりすることができると気づいた。
全十編を書き、賞を頂けたが、分量を増やし再び短編小説を書きたいと思い二年生でも前十八編を書いた。二年連続の受賞であったが、先生からのコメントに「結局何がオチなのか分からないものがある」と書かれていた。そこで、来年は絶対に悔いのない一冊を作りたいと思った。
三年の夏休みがやってきた。今回は「オチ」をこれまで以上に意識し、時間をかけて一つ一つの話の質を高める努力に集中した。また、「地獄に行きたい男」や「地球侵略計画」など幅広い題材をモチーフにした。そして多くの人に手に取ってもらえるよう、本の装丁にこだわった。タイトルはギリシャ語で「精神の浄化」を意味する「カタルシス」にしてカタカナ五文字で興味を惹くのと同時に、不思議な雰囲気な一冊になるようにデザインした。
労作展当日、いつもより長く感じる教室までの廊下を歩き、自分の本を探した。するとちょうど、本を手に取ってくれている方が見え、「賞」という紙がちらりと見えた。これまでの努力が報われた瞬間だった。
僕の労作展の三年間は偶然に始まったに過ぎない。そんな偶然から始まった労作展で、全力で取り組み三年連続受賞ができるなんて、予想していなかった最高のオチじゃないか。