美術科
「労作」の三年間
3年K.M.君
小さい頃から生き物が好きだった僕は、様々な場所で生き物と触れ合ってきた。特に微生物に対する興味は大きかった。親からもらったハンディー型の顕微鏡がきっかけで微生物ブームに火が付いた僕は、顕微鏡を持って海や川へ行き、よく微生物を観察していた。
小学校の自由研究では、身近な微生物の観察や、寒天培養を使った菌の培養など、微生物の研究を重ねていった。これらの経験から、労作展ではさらに深く微生物について調べたいと思っていた。
一年生の労作展では、発酵食品の中の微生物について研究した。味噌や糠床など、自作のものを含めた様々な発酵食品の中の微生物を顕微鏡で観察するとともに、生息環境が微生物の働きに及ぼす影響について調べ、まとめた。ミクロの世界を覗くことはとても楽しかったが、初めてのレポートや制作日誌には苦戦した。特に制作日誌は観察や実験の結果ばかり書いてしまい、自分の気持ちや工夫を書くことができなかった。次の労作展への課題になった。
二年生の労作展では、体験教室で出会った鎌倉彫の奥深さに惹かれ、鎌倉彫に取り組んだ。昔から好きだった絶滅危惧種を、伝統工芸である鎌倉彫で遺したいと思い、題材に選んだ。一年生の時の反省を生かし、制作日誌を充実させ、満足のいく仕上がりにすることができた。
今年の労作展では、祖母の作品に感銘を受け、パーチメントクラフトに取り組んだ。扱う題材を考えた時に、一年生で取り組んだミクロの世界、二年生で取り組んだ普段僕たちが目にするサイズの世界に続いて、さらに大きなマクロの世界を表現してみようと思い、宇宙を題材に選んだ。宇宙の惑星や銀河を描く、「宇宙地図」を制作することにした。
パーチメントクラフトは、専用の紙に針や鋏で加工を施し、レースのように繊細で美しい模様を作り出すペーパーアートだ。このアートの多彩な技法を使って、宇宙の惑星や銀河を表現した。それぞれの惑星の質感や銀河の動きなどにあった技法を見つけ、再現することが難しかったが、パーチメントクラフトならではの模様を入れることができた。
また、パーチメントクラフトの個展で見たメタルエンボッシングアートも作品に取り入れることにした。メタルエンボッシングアートは、金属に模様を施すアートで、独特の光沢や輝きが特徴だ。このアートでは太陽や銀河を表現した。メタルアートの独特な世界観を、太陽や銀河とうまくマッチさせ、輝きを引き出すことができた。パーチメントの白とメタルアートの銀をうまく調和させ、お互いを引き立たせるとともに、神秘的な宇宙を切り取ることができた。
構成にも工夫を凝らした。アクリル板二枚で作品を挟み、それを三つ並べて三層構造にしたのだ。惑星や銀河をアクリル板で挟むことで、宇宙空間に浮いているように見せ、立体感を出すことができた。また三層構造にすることで奥行きを出し、宇宙の広がりを表現することができた。
たくさんの技法やアート、アイデアを思う存分詰め込み、この作品を完成させることができた。計画立てや飾り方の構想、実際の制作、作品についてのまとめ作業など、すべての工程・制作が新鮮で興味深いものだった。作品を作るにつれて、さらなる向上心が生まれ、制作の技術が上がっていくのを実感できた。労作展を思う存分楽しむことができた。
このように、三年間の労作展を通じて、ミクロからマクロまでの世界を研究し、様々な方法で表現してきた。毎回苦悩は絶えなかったが、諦めずに挑み続けることで良い作品に仕上げることができた。その結果、三年連続で賞をいただき、一生ものの経験を得ることができた。この経験を忘れずに、これからも夢中になれるものを探していきたい。
これらの労作展は、家族や先生など、周りの人の支えがあってのものだった。支えてくれた方々に感謝したい。
自ら考え、努力を重ね、自分と向き合い、興味のあることをとことん突き詰める、まさに「労作」の三年間だった。楽しかった。