労作展

2020年度 受賞作品

美術科

かけがえのない労作展

3年H.T.君

  「労作展」 それは自分に大きな変化を与えてくれたかけがえのない行事だ。 三年前の初めての労作展で何をしようかと思っていた時、 日本の伝統的なものを作ろうと突然思いリサーチを始めた。 このぱっと思いついたことに挑戦し、 得難い体験をしたことが僕の労作展のすべての始まりだった。 習字を習っていたこともあり、 僕は一年生の時硯を制作することに決めた。
 硯は鋒鋩と呼ばれる細かい凹凸がある特別な石でしか作ることができない。 その鉱脈は東京近辺にはあまりなく、 僕は山梨県の早川町まで通い、 硯を制作した。 硯の制作は石から削っていくとても地道な作業で、 コツコツ努力することが苦手な僕にとってはとても大変な物だった。 時には一日ぶっ通しで七時間掘り続けた日もあり、 作業後は手が豆だらけになっていて帰りの車ではいつも眠りこけていた。 山梨県まで何回も連れて行ってくれた父には感謝している。 こんなにも頑張ったのは初めてで自分に自信がついた。 職人さんは突然お邪魔した僕にも熱心に指導してくれ、 本当に誇りと愛情を持って硯を制作していることを肌で感じた。 今でも教えてくださった方とは手紙のやり取りを年に何回かするが、 返ってきた手紙はいつも達筆で書かれていて、 ここにも硯の町という特色が表れていると感じた。 他の早川町の方々も硯のことを誇りに思っていた。 現在、 職人さんはほとんどいない。 しかし、 このような美しい地域の伝統文化をなくしてはいけないと強く感じた。 日本の伝統文化に感銘を受けた僕は、 今後の二年間も日本の伝統文化をコンセプトとして、 制作をすることに決めた。
 二年次、 硯を活かせると同時に日本の伝統文化でもあるものを制作しようと思い日本画を描くことに決めた。 僕が二年次に最も大切にしたのは情報収集だ。 そのため、 博物館や美術館、 また、 ネット検索などで日本画について学んでいった。 「百聞は一見に如かず」 とはまさにこのことで、 美術館に行くことで日本画がどのような絵なのかなどを学ぶことが出来た。 どうせなら、 しっかりと日本画を学びたいと考え日本画教室の門をたたいた。 題材はキジに決めた。 とても羽の部分が細かく難しかった。 一緒に習っていたおじさんがキジの資料や写真などを持ってきてくれて、 絵を描くうえでの貴重なヒントとなった。 ここにも人との出会いが生まれていたのかなと思う。 日本画は塗る前の準備にとても時間がかかる。 ただチューブから絵具を出すのではなく、 一から作らなければならないからだ。 一見日本画は華やかに見えるが、 実際は地味な作業の積み重ねに他ならない。
 そして最後の労作展、 三年次の僕の労作展を一つの文字にするならば 「挑戦」 だ。 昨年制作したものからバージョンアップすることに加え、 新たに様々なことに挑戦をした。 四季の彩を主題として春の桜、 夏のヒマワリ、 秋は紅葉、 冬は水仙を題材にして絵を描いた。 花に透明感を出したいと思い和紙の代わりに絹に絵を描いた。 一つ一つの絵に違う技法を用いた。 新しいチャレンジで難しい作業の連続だったが、 自分の理想とする花を描きたくて、 試行錯誤を繰り返した。 異なる技法を使った四連作だったが統一感をもって壁に飾ることができた。
 三年連続で受賞した。 三つのメダルが入ったケースを見ると感慨深いものがある。 僕は 「日本の伝統文化」 をコンセプトに三年間制作を行い日本文化のすばらしさを再確認した。 今後も日本画を趣味として続け、 知名度が低い日本の伝統文化にもっと皆が目を向けてくれるように発信していきたい。 労作展に出会うまでは、 僕はコツコツやることが苦手だった。 しかし労作展では長い夏休みを費やし、 時を忘れ作品制作に没頭した。 この三年間の夏は僕にとって宝物だ。 作品を作る中で人と出会い、 自分のやりたい事に没頭し、 知識を得るかけがえのない体験をさせてもらった。