労作展

2019年度 受賞作品

理科

メダカの錬金術師

2年Y.Y.君

 二年目の労作展のテーマ探しも大変だった。労作展に惹かれ普通部を志願し入学したものの、一年目の結果は散々だったからである。昨年の題材は現代浮世絵だった。製作工程順に展示するという取り組みは良かったと思うが、一番大切な作品そのもののクオリティーが、他の人の作品とは圧倒的に差があったからである。

 あれだけ憧れた労作展で「賞」をとってみたい。もっと自分にあった、身近でコツコツとデータを蓄積し、図表化や数式化を通じて分析、考察する様なテーマを探し回った。

 ある朝、母が春先にもらってきたメダカが目に入った。それまであまり真剣に見ていなかったメダカだが、よく見てみると少し青みがかっている。これを増やしてみると面白いのではないかと直感で思った。メダカの飼育を労作展でやる人はなかなかいないのではないか。

 実験開始するにあたり、ただ単に繁殖させるのではなく、この特徴あるメダカを掛け合わせて、遺伝に関して調べる事にしようと考えた。しかし自分にそんなことが出来るのか?

 メダカを飼った経験も無く、半年しか準備期間が無い中で遺伝の法則を確認するのは現実的に厳しいと思い、少なくとも毎日増えていくであろうメダカの数を数え、天候や餌やりといった育成環境データがどの様に繁殖に関係していくのかも同時に自分の力で捉えてみようと考えた。

 テーマが一旦決まり、メダカを入手しにいった。書籍や店頭で調べてみると、江戸時代からメダカの改良は行われており、青、赤、黄など、また形にも普通型、ダルマ型などいろいろな種類がいることを知った。とりあえず最初は家にいるメダカと同じ色、幹之メダカを購入した。その際にもう一つのテーマであるこの繁殖データを使ってビジネス化出来るか?に結び付くある点に気が付いたのである。

 店頭では、何とメダカ一匹が五〇〇円で売られていた。衝撃だった。普通、研究を続けるには資金が必要であり、自分で繁殖させたメダカの販売利益で実験を続けることが出来るのか、という検証も合わせてやってみたら面白そうだと思いついた。特に一部の改良メダカは一〇〇〇円近くの値段で売っており、ビジネス化検証もあながら非現実とは言えない。

 一匹五〇〇円として計算し、どれだけの稚魚(利益)を生成し、投資した費用(親魚や水槽、ポンプ等)がどう回収出来るかを実験で得られたデータから算出する事を考えた。

 しかし実際はそんなに甘くは無い。大量死をさせてしまったのである。この頼みの綱だった幹之メダカの稚魚の事件で僕は追い迫められ、本当にレポートを最後まで書ききれるだろうかと心配になり、その時この一テーマ選択を悔やんだ。

 追い打ちをかけるかのように七月末月にはとうとう水質悪化のためなのか、空気不足なのか、子の残りがわずかになってしまった。成魚用の大型水槽へ移し、どうにか生き残ってくれ、と願った。生き残ってくれないとビジネス化検討どころか春から続けてきた努力が全て消えてしまう。その後、品種毎に水槽を分け個別管理し、個体数も回復させ、どうにかデータとしてまとめきった事はレポートした通りである。

 また当初から懸念していたが、メダカが生殖機能を持つには孵化から三ヶ月では無理だった。遺伝に関するレポートが書けなくなってしまった。月毎にメダカの品種、親子別の数的推移や環境は、しっかり記録していたのでこれら連関分析やビジネス化検討することは出来たが、以前より興味があった遺伝の研究についてはもう少し早く取り組んでおけば観察ももっと出来たかもしれないと思うと、初動の遅れが悔まれる。

 結果としては、要素毎のデータより理論上は「錬金術師」になれるということが証明できたと思う。が、生命は必ずしも自分の思うようにはならず、実際には実行が難しいのではないかというのが本音である。当初のテーマであったメンデルの法則についてはF2、F3で継続確認していきたい。

 今回のレポート制作では、日常の出来事においても注意深く観察することで興味ある現象が見つけられる事、命が産まれ生き抜いていく難しさを体感出来た事が最大の収穫であった。期間中、色々と助けてくれた両親にも感謝したい。