労作展

2017年度 受賞作品

理科

渡り蝶アサギマダラと滑空

3年K.Y.君

 僕は、小さい頃から虫、特に蝶が好きだった。そして、幼稚舎四年生の時に、アサギマダラという渡り蝶を知った。渡りとは、暑さや寒さを避けるなどの為に移動することで、アサギマダラは海を越えて南下や北上をする。

 アサギマダラの小さな体で、羽搏き続けて渡るのは無理なので、グライダーのように滑空する必要があると考えた実際に、アサギマダラは滑空する蝶としても有名で、その姿は美しかった。僕はその滑空に興味を持って、幼稚舎四年生の時から、作品展、労作展で研究を続けて来た。

 最初の四年間はアサギマダラが滑空に適していることを確認する為、アサギマダラを模した紙飛行機で飛行実験をした。一・二年目は、前翅長と後翅長を小刻みに変え、両者が様々な組み合わせの紙飛行機で、飛行距離を測定した。等高線から思いついた、三次元的なグラフで結果を示した所、アサギマダラの翅の長さの組み合わせで、最も長く飛んでいた。

 三年目は、このもっとも長く飛んだ形の機体に、翅脈のような折り目を入れたり、撓みをつけたりと、立体的な要因で飛行距離に差があることを確認した。然し、その理由までは分からなかった。

 普通部での初めての労作展となった四年目は、重心の位置と錘の重さを変えて、飛行距離の違いを調べた。翼面荷重が大き過ぎると伸びのない飛び方になることも分かった。

 五年目は、三年目で説明できず、モヤモヤしていた点を解明することにした。気流の乱れを可視化することにし、風洞実験を行った。風洞の製作など実験の準備に時間がかかったが、機体の形や迎え角によって気流の乱れに違いのあることが確認できた。

 このように研究を重ねて来て、今回の六年目を迎えた。

 労作展が最後となりこの研究も最後になるかもしれないということもあって、早くから資料集めや風洞の改良にも力を入れた。実験で見たいことも、昨年には大体決まっていた。昨年は、紙飛行機を用いていたが、生体の再現に限界を感じた為、生体を使うことにした。

 然し、生きたアサギマダラを風洞の中に入れて気流を観察する為には、いわばトレッドミル(ルームランナー)のような状態を作らなければならず、苦労した。翅や脚を傷めず、しかも、蝶が傾きを変えたり羽搏いたりできるように針金の先に固定しなくてはならない。アサギマダラを採集する前に、他の蝶で、様々な種類の接着剤やテープで試した。針金にも改良を加えた。

 夏休みに入ると富士見高原に行き、アサギマダラを採集した。十一匹も採れた為、沢山のデータを取ることが可能となった。比較するためにのキアゲハなども採集した。

 線香の煙を扇風機で風洞に引き込み気流を観察した結果、アサギマダラでは滑空に適した気流になっていることが確認できた。例えば、アサギマダラは迎え角五度位の時、気流の乱れが非常に少なく、気流は流線形の翼を通っているかのような流れになっていた。一方、キアゲハでは、尾状突起によって気流が乱されていることも確認できた。更に、固定方法を工夫したことから羽搏き時の気流も観察できたが、アサギマダラは、滑空を前提としてより高位置に上昇するような羽搏きであったのも新な発見だった。

 かなり面白く、はっきりとしたデータが得られたので、順調に思えたが、部の合宿などで、まとめる期間が案外短かったのはかなり辛かった。データは四年目までの飛行実験のような数値ではなく、図である為余計に、他人が見ても分かり易いことを意識してまとめた。

 六年間、一貫して研究できるテーマに巡り会えたのは好運だった。又、飛行機と異なり蝶を含め、低速の滑空は解明されていないことが多い。そこで、結果がそうなる筈だという考えに捉われず、前例をなぞることもなく自由にワクワクと観察でき、結果も型にはまらずにまとめられて楽しかった。 只、唯一の心残りは、これが最後の労作展だったので、もう、これ以上の実験ができないことである。