労作展

美術科

切り絵「三田 旧図書館」 / 三度目の労作展

3年S. K.君

 今回で第八十八回になる労作展。慶應義塾普通部の重要な行事の一つである。僕はこの労作展に、「切り絵」というジャンルの作品を出展してきた。切り絵は小学校二年生から毎年一作品、「書」「風景」などと制作してきたが、労作展では「建造物」という新しいジャンルに挑戦し、三年間「三田 旧図書館」をテーマに取り組んだ。
 三度目となった今回は、今までで最も良い作品に仕上げようと、下調べから一つ一つ丁寧に行ってきた。しかし問題点が一つあった。それは夏休み中にサマーキャンプで二週間アメリカへ留学していたため、作業できる日数が少なかったというところだ。少ない日数の中でどれだけ良い作品を作れるかが勝負だった。
 二年生の一月、次の労作展も「三田 旧図書館」にしようと考えていたとき、慶應義塾のニュースで耐震補強・改修工事を行うということがわかったため、急いで写真撮影に行った。三回目のアングルは、今ではまともに見ることのできない昔の正門があった方向からにしようと決めていたため、木で生い茂った林の中から隙間を見つけては写真を取り、全体像を思い浮かべた。本来ここで一から構図を作れば最も労作という名にふさわしいのだろうが、さすがに大変なのでもととなる画像探しをした。しかし考えていた「幻の門」が入っている構図は無く、建物全体が映っているものをもとにアレンジを加えていきながら完成形に近付けていくことにした。これだけははずせないという「幻の門」は写真自体残っているものが少なく、全体がうまくおさまっている画像を探すのは大変だった。これさえ見つけてしまえばあとは作業を進めていくだけだったのだが、今回苦労した部分は線の細さと画像ではわからないところを補って描かなくてはいけないことだ。紙をカッターで切り抜いていく上で、線の細さというのは重要で、細いと少しのミスでも命取りになってしまうため難易度が上がるのだ。その点においても今回は特に難しかった。そこからは地道にコツコツと作業を進め、作品が完成した。
 僕は嬉しいことに一年生、二年生と賞をいただいていたため、今年もと思っていたが、作品の出来に関しては二年生の時の方が線のバランスも良く感じたので、受賞できるか少々不安もあった。しかし、夏休み中に努力し、毎日日誌をつけて、一つ一つの工程をしっかりと行ったことは先生方も理解して下さり、三つ目の賞をいただくことができた。
 三年間切り絵を制作してきて最後に感じたのは、労作することの大切さである。その名の通り、労作展というのは個人個人が時間をかけ、努力し、仕上げた作品を出すということだ。一つの作品を作り上げた時には、達成感はもちろんのこと、努力は賞と言う形で報われるということがわかった。この先もどんなことがあるかわからないが、労作展で得たことを忘れずに努力を積み重ねていきたい。