2016年度 目路はるか教室

1A

進化する東京駅 日本の中央駅の歴史と次の100年

昭和38(1963)年卒業株式会社 鉄道会館 相談役

野﨑 哲夫 氏(のざき てつお)

1、 授業の概要
 当社会議室(丸の内)で多くのパワーポイントとDVDを使い、私のライフワークでもある「100年余りにわたる我が国の中央駅・東京駅の進化と将来」について内容はやや高度ですが、下記の内容をなるべく分かり易く説明しました。
(1)駅が建設される以前から始まっていた周辺の丸の内や八重洲の街づくり、(2)鉄道駅としての役割、機能の進化・発展、(3)赤レンガで親しまれてきた国の重要文化財・丸の内駅舎の復原、(4)駅と周辺の街を繋ぐ「エキナカ」開発の戦略、(5)これからの東京駅と「駅を街にする」東京ステーションシティ(TSC)開発。
 また、大学卒業後、当時の日本国有鉄道に入社以来、多岐にわたる分野(鉄道整備計画、鉄道経営、リゾート経営再建、住宅開発、東京駅開発)にリーダーとして携わってきた経験から言える私の「行動指針」を皆さんにとって参考になればとお話ししました。
 これらの講義の後、東京駅見学を行い、同駅トップの厚意で駅長室見学、関連解説を受けるなど貴重な体験をしてもらいました。

2、 授業後の皆さんの感想と私のコメント
 1914年に4面8線のホームと丸の内駅舎でスタートした東京駅は、日本の近代化、鉄道網整備の象徴として進化、発展し、現在は地上、地下に合計14面28線のホームを有し、歴史の時空・丸の内駅舎、未来と環境を表現する八重洲グランルーフ、八重洲側超高層ビル、駅と周辺の街を結び付ける、「エキナカ商業施設・グランスタ」等からなるTSCとして進化し続けてきました。それは1つのプロジェクトを実行する際、長期構想を視野に、将来の進化・発展に支障が無いようあらゆる考慮をして進めてきたことを意味します。具体例もいくつか示しましたが、多くの皆さんに「長期スパンでものを考え、実行することの大切さ」を現在の自分にも当てはめて共感してもらいました。
 「行動指針」でお話したことに関し、「優先順位」をしっかりつけて行動することの大切さや、「当面の最大の課題には全力で取り組むこと」また、困難に直面した時の「あきらめない」粘り、「チャレンジ精神」など「大変参考になった」とする感想や、この授業を聴いて「自分の将来や夢をしっかり考え、積極的に前進したい」「街づくりや駅の再開発に大変関心を持った」「身近な人が携わっている街づくりの仕事への理解、関心が増した」という皆さんの声はいずれも私が授業で強調したことです。
 なお、以前から東京駅を研究している人もいて驚きましたが、授業・見学会を大変満足してもらって「今回の授業は一生の宝物」「機会があれば続編を講義してほしい」などの感想も寄せてもらい後輩の皆さんのために少しは有意義な授業ができたかなと満足しています。
 「エキナカ・グランスタ開業、丸ノ内駅舎復原」以来、多くの依頼を受け、各大学公開講座、経済団体研究会等で何十回と講演してきましたが、今回、母校の普通部で後輩諸君に私が長年携わってきた「東京駅の進化」についてお話する機会を得たことは大変うれしく、やりがいのあるものでした。
 講演でもお話しましたが、普通部の3年間は自己完成にとって最も大きな影響を与えてくれた期間で、今でも優れた友人、先生、校風に感謝しています。皆さんも友人を大切に、勉強でもクラブ活動でも何でもいいと思いますが、普通部生活を実りあるものにし、更なる成長・飛躍を遂げることを期待しています。そのために私の講義が少しでもお役に立てば望外の幸せです。