2016年度 目路はるか教室

2016年度 目路はるか教室 3年全体講話

メガトレンドとこれからの世界

昭和43(1968)年卒業プライスウォーターハウス日本代表

鈴木 洋之 氏(すずき ひろゆき)

 いま世界は100年200年に一度の大きな変革期を迎えています。我々は大きなカーブを曲がっている最中で、このカーブを曲がり終えたときにどんな世界が待っているかはまだ誰も知りません。この大きな流れを起こしている四つのメガトレンドがあります。それは(1)人口動態の変化、(2)経済パワーの移動、(3)気候変動と資源不足、(4)テクノロジーの進歩です。
 西暦ゼロ年の世界人口は1億人だったと言われています。西暦1000年では2億人、2000年は61億人、現在は73億人です。ただし人口の変化は世界で一様ではありません。日本、ドイツ、韓国は少子高齢化、インド、インドネシア、アフリカ各国は若い人口が多く、人口は増加しています。各国による人口動態の違いは国の経済パワーに影響を与えます。現在日本のGDPは世界三位の大きさですが、2050年には7位になると予想されています。日本を抜いて上位に顔を出すのはインド、インドネシアのような人口が増加する国です。日本の人口は2015年の国勢調査で初めて減少が確認されました。私が普通部3年の日本の人口は96百万人、現在は126百万人、2050年にはもう一度97百万人まで戻ると予想されています。人口が減り、相対的な経済力の順位が下がること自体、悪いこととは限りません。重要なことは日本が能力のある人が可能性を実現できるような国であり続けることだと思います。
 発展途上国の人口が増え、経済が成長する時、その国の人の生活水準の向上も伴います。
米国の一人当たりエネルギーの使用量は中国の3倍、インドの10倍です。温暖化ガスの増加により、産業革命以来、地球の平均気温は既に0.85度増加しました。2100年には4.8度上昇すると言われています。温暖化は農業などの食料生産にも影響を及ぼします。現在の穀倉地帯の温度が上昇し、農業に適さなくなるかもしれず、食料輸出国が輸入国になるかもしれません。
 技術革新は人類に大きな影響を与えてきました。世界の人口が爆発的に増えたのも技術革新があったからです。印刷技術、蒸気機関、電気のような発明は単に便利になっただけでなく、社会や人の生活を変えました。最近で言えば、スマートフォンは私が学生だった頃、教室二つでも入りきれないほどの大きさのコンピューターがやっていたことの何倍もの能力を持っています。スマートフォンは単にゲームや情報を見るのに便利だというだけでなく、誰もがどこでもネット上の情報にアクセスし、情報を発信し、いろんな人と繋がる事により、情報格差をなくした事に大きな意味があります。世界の誰とでも何時でもコミュニケーションが取れることにより、世界が狭くなり、世界が均質化の方向に向かいました。しかしそのスマートフォンもじきなくなるでしょう。情報端末は小さくなり、やがて情報は脳に直接ダウンロードできるようになると言われています。人工知能は2045年ごろ、人間と同じように自分で考え自分で行動するように進化すると言われています。生化学でも技術革新は進み、人間の寿命が120から150歳に伸びる技術はもうすぐ実用化されると言われています。人間の肉体に機械や人工臓器を組み込み、脳はネットと繋がる事が当たり前の時代が来るかもしれません。電気が電球を灯した時、電気が大量の情報を処理し、ネットで世界がつながる時代が来ると言う事を予想できた人がいなかったように、我々が将来を予測してもその通りにならないでしょう。The future will surprise usと言うのは私の好きな言葉です。将来は我々の予想を裏切り続けるから面白く、ワクワクするのです。
 このような大きな変化が起こる世の中で皆さんには(1)好奇心を持ち、(2)広く海外に目を向け、そして(3)自分で何が正しいか考えそれに従う事の大切さを考えていただきたいと思います。