2017年度 目路はるか教室

3Iコース

弁護士というお仕事

昭和63(1988)年卒業慶福法律事務所 弁護士

金子 玄 氏(かねこ げん)

 春先に講師のお話しを正式に頂戴してから、後輩の皆さんに少しでも弁護士という仕事の内容に興味を持ってもらうにはどうしたら良いか、色々考えあぐねましたが、裁判傍聴と講演という二部構成でオーソドックスに授業をさせていただくことに致しました。

 さて、当日の前半は、集合場所である弁護士会館一階で刑事裁判の基本的な流れを解説した上、東京地裁の刑事裁判を傍聴しました。傍聴した事件は、詐欺被告事件の証拠調手続きでした。皆さんのうち大半が裁判傍聴は初めての経験のようでしたが、被告や被告の妻・母親の尋問を間近で聞き、ドラマ等でイメージするのとは違った実際の裁判の緊張感や遣り取りを感じてもらえたのではないかと思います。

 裁判傍聴後は、東京地裁、法務省、検察庁、東京家裁の周囲を施設の特徴等を簡単に説明しながら一巡し、弁護士会館に戻り、後半は第一東京弁護士会の講堂で「弁護士というお仕事」というタイトルで講演を行いました。

 まず、私の自己紹介、弁護士を目指すに至った経緯、受験時代の勉強の仕方等を話した上で、できるだけ弁護士の実際の仕事のイメージを持ってもらうため、私の一日のスケジュールのほか、実際の仕事の内容についても刑事事件、一般民事事件、企業法務について自分の担当案件を抽象化して説明しました。また、私が日弁連の高齢者・障害者委員会の委員や弁護士会の成年後見委員会の副委員長の経験もあることから、数多く取り扱っている成年後見等の高齢者の案件についても説明しました。生徒さんの事後の感想文を拝見すると、少年事件や成年後見事件に対する印象が強かったようです。

 そして、講演後半では、僭越ながら、私の送ってきた弁護士生活を振り返りつつ、弁護士の仕事にとって必要な要素として、①基本的な法的知識の素養、②文章(書面)を書く力、③自分の判断基準(弁護士としての物差し)の確立、④柔軟な思考・対応、⑤合理的な事務処理・時間管理、⑥俳優(女優)的な要素、⑦良い意味での鈍感力(「こだわらない」、「引きずらない」)、⑧自分の身は自分で守るという気持ちの8要素、弁護士の仕事の良さ・しんどさ、今(中学生・高校生)のうちにやっておくと良いことについて実例を踏まえつつ、ざっくばらんにお話ししました。

 弁護士は何も高尚で偉い仕事をしている訳では決してありません。相談者は自分とは異なる経歴・生活圏の方が大半です。相談者の人生を受け入れる必要はありませんが、少なくとも理解しようとし、自分が何か助けてあげられないかを考えることや相手方が何を考えているのか想像することは大切です。

 また、弁護士は仕事柄ストレスもたまりますが、それを上回る大きな魅力として、自由業として自分のペースで仕事ができ、趣味等に時間を費やすこともできます。何よりも依頼者に感謝していただき、その人生のやり直しの手助けをさせていただくことはやはり大変貴重なことであると思います。

 後輩の皆さんには、受験のない学生時代に自分のアンテナを拡げ、興味のあることには何でも取り組み、友達を沢山作ってもらいたいと思います。その全てが弁護士になった時の糧となるはずです。皆さんが将来弁護士を目指すに至った時、私の今回の授業を思い出してもらえれば、こんなに嬉しいことはありません。

 最後になりますが、私を推薦して下さった網谷・江木先生、学校側の総括担当で恩師の荒川先生、引率担当の大久保・森浦先生に感謝申し上げます。私にとっても自分を振り返る大変に良い貴重な機会となりました。

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