2017年度 目路はるか教室

3Hコース

「目路はるか教室」を終えて

昭和62(1987)年卒業年卒業株式会社 東京ニュース通信社 代表取締役社長

奥山 卓 氏(おくやま たかし)

 今回、普通部の学生に自社および業界の将来、そして日本の将来と慶應生の可能性を話させていただく機会を頂戴し、まことにありがとうございました。当初中学3年生に授業をするというのは、大変難しいことであるなと考えていました。いくつかの大学や社会人を相手に講演をする機会は持っていましたが、中学3年しかも普通部生が相手となると話は別。自分がその年代の時のことを思い出しながら、どのように伝えれば、どのレベルの話であれば聞いてもらう事が出来、そして理解してもらえるかを悩んでおりました。

 今回、講演内容としては、当然当社の紹介と業界の現状と未来を伝えることもありましたが、タイトルとして「可愛くないのに売れるアイドル、可愛いのに売れないアイドル」と、わざと中学3年生が興味を引く内容にさせていただきました。授業のゴールポストは、タイトル通りではありません。日本の未来と学生みんなの素晴らしい将来性を理解してもらう事です。

 その内容の繋げ方は、聞いた学生達だけの物にしたいと思います。大事にしたかったのは「授業を聞いてもらう事、授業を楽しいと思ってもらう事、そして授業に積極的に参加する事」です。正直、自分の中学生時代お世辞にも真面目で授業をしっかり聞いていたとは言えなかったので、そんな自分でも聞く授業は何か?を考えました。

 十数年前、中国の小学校で日本についての授業をした事があります。質問の挙手を求めた所、すべての生徒が手を挙げました。3人目の質問を聞いた後、1人が泣き出しました。どうしたのかと思ったら「どうして僕をあててくれないのか?」という主張。愕然としました。この貪欲さ、日本は将来確実に食われて行ってしまうのでは?と真剣に感じました。

 今回の授業では、挙手をする事、積極的に意見を述べることについてインセンティブを与えることにしました。その行為自体が楽しいと思い込ませるためです。このやり方については、学生の多くから「とても良かった」と評価をもらいました。大学生への講演を行う際は、今回とは違いますが同じように挙手の大切さと自分なりの考えを持つことの大切さを常に伝えています。

 普通部生の皆さん。今回授業で伝えた事の中で「Japanese dream」があったと思います。「努力が報われるとは限らない。しかし成功した人は、すべからく努力をしている」と、良く言われます。ここで重要なのは、努力を成功に導く運とそれを引き込む力です。大前提としての努力は必須ですが、成功に繋げるチャンスを皆さんは持っています。この学校に転がるチャンスは、他のどこにも負けません。恵まれた環境を最大限に活用してください。まずは同窓生全員が仲良くなる事から始めてください。

 学校の先生にもお願いしたい事があります。生徒の将来を作るのは第一義的には親であることは間違いありません。しかしながら、外から最も強く人生に影響を与えるのは先生です。「あの先生のお陰で人生が変わった」というのは良く聞く話で、実際に私も体験しました。学ぶことを楽しくも辛くも出来るとてつもなく責任のあるお役職。先生という仕事の精神的・体力的な負担は大変なものがあると聞いてはいますが、若者を変えることは日本の将来を変える事と同義であると思います。ハーバード大学マイケル・サンデル教授の授業のような一人一人が考え積極的に参加していく時間をぜひ作っていって欲しいと感じます。

 今回の「目路はるか教室」の講師陣の素晴らしい事、そして歴代の面々。なんて素晴らしい学校なんだろうと慶應義塾の持つ強さの根源を知る企画です。これからも是非広く繋げていってください。将来、今回授業を受けた学生達が優秀な経営者となり、自分なりの考えを持ち、そして次の世代に繋げていくようになればこんな嬉しい事はありません。

 改めてこのような機会を頂戴し、誠にありがとうございました。

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