2017年度 目路はるか教室

2Fコース

目路はるか教室を終えて【普通部生にこれから身に付けて欲しい3つの資質】

昭和53(1978)年卒業ヤマトホールディングス 株式会社

牧浦 真司 氏(まきうら しんじ)

 日本の金融機関に14年、世界最大の米系投資銀行に16年間在籍し、日本のインフラ企業のM&Aや大規模資金調達、JALの再生をお手伝いした後、ヤマトホールディングスに2年半前に転じ、グループ全体の構造改革プロジェクトのリーダーを務めています。

 ヤマトグループには全社に約20万人の従業員がおり、その多様な人員構成は、ある意味日本社会の縮図のような企業グループです。またヤマトグループは、昨今、報道された人口減少社会の到来による人手不足問題、社会インフラ企業として地方の過疎化への対応、また、アマゾンに代表されるIT分野の海外巨大企業等との競争といった日本経済全体に共通の課題に直面しています。私は経営陣の一角としてそのような課題と日夜格闘していますが、その経験を踏まえ、教室に参加して頂いた普通部生に、これからの日本人がグローバルで戦っていくために必須の資質として以下の3つを是非、慶應義塾に居る間に身に付けて頂きたいとお話ししました。これらはグローバルにこれから皆さんと時には手を携え、時には厳しく戦う同世代のエリート達が当然ながら身に付けているものばかりです。

 第一に語学力。英語でのコミュニケーション力は当然であることに加え、今後30年を展望すれば、英語に加え、もう一か国語については日常会話程度の能力を有することが必須となると思われます。中国語、スペイン語、アフリカ大陸経済の成長を念頭に置けば仏語も候補となると思います。普通部生と同等の海外の学生、例えば英国のボーディングスクールの卒業生は当然の如く複数の言語を操ります。但し、個人的な持論ですが、豊かな外国語力の基礎には、しっかりした日本語の国語力が必須と考えています。国語力(読解力、作文力等)が日本語で弱いと外国語を学んでも伸びしろが少ないと感じています。古文を含む日本語をしっかり勉強した上で、是非、複数の外国語にチャレンジしてみてください。

 第二にリベラルアーツ分野に於ける豊かな素養。人工知能(AI)が当たり前になる時代に於いて、人類に求められるものは高度な判断力です。判断力の基礎として、哲学、倫理、歴史といったリベラルアーツ(一般教養)の知識がしっかり各個人のバックボーンとなっていることが求められます。リベラルアーツを身に付けるためには古今東西の古典を読み漁ることが出発点となると思います。電子書籍でも構わないので、是非、読書の習慣を普通部に在籍する間に身に付けて欲しいと思います。また、環境が激変するなかで進むべき道を見失わないためには歴史感が重要です。時間軸と空間軸をしっかり持ち、高いレベルの判断を行うために是非、リベラルアーツ分野を勉強してください。

 第三に、広い意味でのテクノロジー/サイエンスについての理解。近い未来には、文系、理系といった区別は無意味な時代が来ると考えています。人工知能の活用方法は文系・理系に関係なくあらゆる社会の場面で必要となり、現在は理系領域とされる分野と文系領域の相互乗り入れが当り前となります。そのような世の中で暮らすこととなる世代にはテクノロジー/サイエンスについての理解が非常に重要となります。

 さて、以上に加え、当然ながら頑強な身体はすべての基本です。是非、身体能力の基礎が出来る皆さんの世代に於いては、しっかり体を鍛えてください。やることは多くても皆さんには時間があります。また、腰を落ち着けて取り組める慶應義塾の環境があります。是非、グローバルでポータブルな人材、つまり、明日世界のどこに飛んで行っても着いたらすぐ現地の仲間と的確に仕事をこなせる、また、彼らと仕事が終わったら様々な話題で議論して盛り上がるといった生活が楽しめるような人材に育って頂きたいと思います。

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