2020年度 目路はるか教室

2Iコース

世界を旅する弁護士から 授業を終えて普通部生に伝えたい事

1992(平成4)年卒業弁護士(森・濱田松本法律事務所パートナー)

大西 信治 氏(おおにし のぶはる)

 2020年11月7日、引率の桑原先生に連れられて、22名の元気な普通部生が、丸の内にある森・濱田松本法律事務所に来てくれました。

 丸の内のオフィス街に制服を着た中学生が大勢で来ればさぞかし違和感があるのではないか、という私の事前の懸念は完全に杞憂であり、さすがは慶應義塾普通部の生徒であると感心させられる程、皆、オフィスビルの中、事務所の中で、とても行儀よくしてくれました。こうした行動ができることは、日頃の先生方のご指導の賜物であると敬服するとともに、卒業生として、非常に誇らしく思いました。

 私は弁護士ですが、その専門分野は投資ファンドという、大人でもほとんどの人がよく知らない仕事をしています。果たして私の仕事の内容を普通部生にお話すすることでよいのか、当初は目路はるか教室の講師を引き受けることについて迷いもありました。しかしながら、普通部を卒業した人の中で、こういう仕事をしている人もいるのかということを知ってもらうことも、一つのよい経験なのではないかと思い、本年の授業を担当させていただきました。

 授業の内容は、できる限り平易なものとし、また、せっかくの機会でありましたので、弁護士の話にとどまらず、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の仕事の話、憲法と法律の話など、私の仕事に関連するものを幅広く拾ってお話いたしました。

 いくら平易な内容にしたと言いましても、おそらく平均的な中学生が私の授業内容を聞いたら理解が難しかったと思います。しかしながら、さすがは普通部生、少しでも私の話の内容を理解しようと努めてくれ、また、私からの質問についても(おそらく今まで考えたこともなく難しかったと思いますが)自分の頭で考えて積極的に答えてくれていました。

 多くの人は、大学を卒業する頃に就職活動をして社会人となっていくわけですが、学生時代のどの時点で将来の進路を考えるかは人それぞれだと思います。かなり早い段階から特定の職業に就くことを夢見て準備を始める人もいれば、就職活動をする時期になって初めて将来の進路について真剣に考える人もいます(ちなみに、私は完全に後者です。)。早い段階から将来の進路を考えることがよいのか、それとも、あまり焦る必要はないのか、どちらがよいのかは一概に言えないと思いますが、普通部生の皆さんは、せっかく目路はるか教室を受講して先輩から仕事の話を聞く機会を持ちましたので、(あくまでも現時点でということであり、その後、考えが変わることは大いにあると思いますが、)一度、将来どのような職業に就きたいか、卒業後に何をしてみたいかといったことを考えてみてもよいのではないかと思っています。

 学校に在学している間は、先生が様々なことを教えてくださいますので、どうしても受け身の姿勢になることが多いと思います。しかしながら、いずれ社会に出た後は、常に自分の頭で考えて、積極的に行動し、人生を自ら切り拓いていかなければなりません。もちろん、慶應義塾普通部を卒業し、高等学校、大学に進学していけば、何も考えずに流れに乗っているだけで、ある程度、恵まれた人生を歩むことになると思います。しかしながら、普通部生の皆さんは、(まだ実感がないと思いますが)非常に恵まれた教育環境の下、素晴らしい先生方からご指導を賜っていますので、ぜひそうした環境におけるご指導を余すことなく吸収し、自身の成長の糧としていただきたく思います。そのようにして自身の実力を付けていけば、次第に自分の頭で考え、行動することができるようになります。こうしたことを意識して日々の生活を送るようにすれば、きっと皆さんの人生は光り輝き、実りの多く、充実したものになると思いますので、ぜひ実践してみてください。

 目路はるか教室が、皆さんの今後の長い人生にとって、少しでも有意義な機会となりますことを心より祈念しております。

 

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