2020年度 目路はるか教室

1Dコース

豊かな人生を歩むために

1979(昭和54)年卒業株式会社 三菱UFJ銀行

髙﨑 郁雄 氏(たかさき いくお)

 「目路はるか教室」の講師という貴重な機会を頂き、本当にありがとうございました。

 「生き様を語る」という難度の高い課題に挑戦する過程で、自分自身が生きてきたこれまでの道のりをじっくりと振り返ることが出来、これからの生き方を考える良いきっかけになりました。私は普通部卒業後、塾高、大学と進学し、1986年に旧富士銀行に入行、約18年間勤務した後に旧UFJ銀行に転職、現在に至っております。その中で、沢山の素晴らしい方々との出会いに恵まれたことに改めて感謝の思いが溢れ、この思いを私の「生き様」として普通部生に伝えよう、と考えました。私が行った授業の流れとしましては、まず、慶應義塾との繋がりの中で学んだこと、そして銀行業務、特に富裕層取引を通じて感じたこと、の大きく2つに分け、豊かな人生を歩むための生き方、考え方について問いかけました。

 慶應義塾のことを振り返ると、私は幼稚舎時代に6年間担任をしていただいた川村博通先生(通称・川先)のことがまず思い浮かびます。川先とは幼稚舎卒業後も、先生が67歳で亡くなるまで(私が塾高2年の秋でした)、志賀高原の熊の湯にある山小舎をはじめ、色々なところでお付き合いをいただきました。川先は幼稚舎生だった私たちに、「生きるってことは死ぬってこと」「慶應義塾は愛の学校である」「捨て身になれ」など、小学生には少し難しいお話を沢山教えてくださいました。川先のこうしたお話が基礎となり、その上に柔道部での生活や、塾員となってから経験した連合三田会のお手伝い、卒業25周年記念事業での募金活動、さらにコーチとしてお伺いしている湘南藤沢中高等部の柔道部での体験等々が積み重なり、私の人生の一面が形成されたように思います。この経験を踏まえて、慶應ならではの先輩から後輩への深い思いやり、そしてそれを受けた後輩は、受けた恩を当たり前と思わずに、そのまた後輩へ返していく良き伝統、また「グッドルーザーであること」が、勝つことと同じくらいに大切だと気づかせていただいたこと、などをお話ししました。

 社会人となり銀行に勤務するようになってからも、沢山のことを経験しました。ラグビー関係者の方から伺った「偶然と必然」のお話や、採用活動に際して上司から言われた「クリエイティブな発想と、実行力のある学生を採って来い」との言葉、また銀行が大規模なシステム障害を起こした時に感じたことや、担当していた富裕層取引の業務に魅力を感じるようになり、転職を決意するに至った経緯などを伝えました。事前に配布する授業の概要説明に、「お金持ちの方々には共通することがあります。何だか分かりますか?」という問いかけを記しました。私は20年以上に渡って担当している富裕層取引の経験から、いわゆるお金持ちの方々は、些細なことにも感謝の気持ちを言葉で表す共通点があることに気づきました。多くの普通部生にとって富裕層とは、けちであったり意地悪であったり、というイメージがあったようで、後にいただいた感想文には、私の答えに対し「意外でした」との声が寄せられました。この習慣は、豊かな人生を歩む上で大きなヒントになると思います。また、転職した当時の私の考え方に合致した「乗風破浪」という言葉や、「独立自尊」と共に福澤先生が言われたとされる「独立他尊」についても紹介しました。

 授業を通じて普通部生に伝えた要旨は、1.当たり前と思わず、常に感謝の気持ちを持つこと、2.正解を見つけるのではなく、出した答えを正解にすること、3.投げられたら受け身を取って、また立ち上がること(柔道を例にして)、の3つです。私自身もこの気持ちでこれからを生きていこうと思います。

 コロナ禍での大変な状況にも関わらず、素晴らしい機会を与えてくださった先生方や世話人の皆様のご尽力に、あらためて心から感謝申し上げます。

 

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