2020年度 目路はるか教室

1Bコース

人生を豊かにするENJOYアスリートのすゝめ 〜トライアスロンとアウトドアスポーツの魅力〜

1976(昭和51)年卒業SMBCオペレーションサービス 株式会社 業務統括・監査部

山中 宏耕 氏(やまなか ひろやす)

 還暦を迎えた今年、図らずも目路はるか教室の授業を受け持つ機会をいただき、卒業後44年を経た普通部のキャンパスに足を運んだ。先輩OBの生き様を普通部生に伝えるという趣旨に照らして何を話そうか迷ったが、私が社会人として趣味でやっているトライアスロンと登山を中心にアウトドアスポーツの魅力について話すことにした。それには3つの側面がある。1つ目は、50歳を過ぎてから始めたトライアスロンや自転車やマラソンを通じて、友人も増えて楽しく充実した日々を過ごしていること。2つ目は、私のアウトドアスポーツとの出会いは、普通部の林間学校やスキー学校が原点であり、それ以来の活動や友人が宝物として人生を豊かにしてくれていること。3つ目は、アウトドアスポーツを生涯の趣味としたENJOYアスリートという人生スタイルが、実は肉体的・精神的な健康生活を通じて仕事やビジネスにもプラスの効果があること。以上を普通部生に伝えたいと考えたからだ。

 受け持ったのは1年生の30人。小学校を卒業して1年足らずの彼らに、父親より年上のおじさんから大人の合宿のような話をしたところで果たして伝わるのかどうか不安だったが、杞憂であった。彼らの将来に向けた問題意識の高さは事前の自己紹介書を読んで驚かされたし、授業当日も真摯な受講態度で関心を持って講義に臨んでくれた。私の話も次第に熱を帯びて後半は若干駆け足になってしまったが、ビデオや写真を織り込んで3時間たっぷりの授業に最後まで参加してもらいホッとした。

 後日送られてきた感想文を読むと、彼らが予想以上にトライアスロンという未知の競技に興味を持ってくれたことや、ENJOYアスリートという社会人スタイルに共感してくれたことが感じられて嬉しく思う。また、自分達も将来社会人としてアウトドアスポーツへの取り組みを目指したいと考えてくれたことは講師冥利に尽きる思いである。将来、彼ら30人のうちの何人かがトライアスロンや登山を趣味とするENJOYアスリートになってくれるかもしれないと思うと、とても楽しみであり期待したい。更には、例えば30代の彼らと70代の私が、同じトライアスロンのレースに一緒に参加することも夢物語では決してない。エイジ制度のあるトライアスロンにおいてはごく普通のことである。講義でも紹介したが、日本には稲田弘さんという88歳のギネス認定世界最高齢の現役アイアンマンがいる。その話も大きな刺激になった様子が感想文に書かれていたが、私自身、彼らとともにこれからも挑戦を続けていく覚悟を新たにした。

 今年は想定外のコロナ禍で、状況次第では開催できるかわからない中での講義準備となったが、ご担当の先生や世話人の方々のご苦労は大変であったものと推察するとともに、おかげさまで無事に秋晴れの下で講義を終えることが出来たことに心から感謝を申し上げたい。目路はるか教室に講師として参加して感じたことは、先輩講師の方々も仰っているように、私自身にも大変有意義な経験となったということである。自分はどんな人間で、これまでどんな人生を歩んできたか、人生の節目でじっくり振り返ることが出来た。私のアウトドアスポーツとの関りは、これまでの生活や仕事の中で何らかの転機と繋がっていたことがわかり、その一つ一つが意味を持って今の自分に活きていることにも気付かされた。もう一つは、60歳のOBと現役の普通部生が初対面で一つの教室に3時間も向き合う場を与えていただける普通部の懐の深さ、そしてそれが心地よく打ち解けてしまう慶應義塾という大きな繋がりの力を実感した。私にとってはアウトドアスポーツとの出会いという、今の私の原点とも言える普通部にあらためて感謝するとともに、目路はるか教室が今後も継承され、一層拡充されんことを願いたい。

 

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