2020年度 目路はるか教室

1Aコース

オリンピックを目指して始めたアーチェリーと慶應義塾で得たもの

1975(昭和50)年卒業東京海上日動ファシリティーズ株式会社 取締役常務執行役員 / 三田アーチェリー倶楽部副会長

櫻井 伸也 氏(さくらい しんや)

1.はじめに

 普通部では部活無しの大人しい平凡な生徒。塾高で最初に説明会に行ったのが洋弓部。「君もオリンピック選手になれる」と言われ入部、大学までの7年間洋弓部に所属。慶應義塾洋弓部は強く、塾高はインターハイ団体優勝3回・個人優勝3回、大学は全日本学生大会で団体優勝3回・個人優勝3回の強豪校です。

 私は選手としては大成せず、でも洋弓部で得たのは掛け替えのないことばかりです。

1.慶應義塾を背負って試合に出られたこと。

2.素晴らしい同級生・先輩・後輩、塾體育會の他部や他大学の仲間に出会えたこと。

3.日本一という目標を共有する仲間と、同じ方向を向いて頑張れたこと。

4.部活動という集団活動を全うし、主将としてリーダーシップを学べたこと。

5.花形選手ではない分、選手ではない立場で如何に部に貢献するか考えられたこと。

 選手ではない人の気持ちが解ったこと。選手以外の部員の大切さが解ったこと。

2.まっすぐ引いて、まっすぐ押す 正射必中

 「まっすぐ引いて、まっすぐ押す」ことができて、的の中心に狙いが定まり、筋肉が自然に動くと、弓は必ず当たります。逆にこれが出来ず間違った練習をすると下手になります。基本は「正射必中」即ち「正しいことを正しくやる」ことです。

 私は通勤で東急東横線に乗ります。普通部生は概ねお行儀が良い。塾生は良くも悪くも世間から注目されます。慶應義塾の目的に「気品の泉源・知徳の模範…(中略)以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり」とあります。皆さんも、正しいことを正しくやり、人格を備えた社会の先導者になって下さい。

3.東京海上火災保険に入社

 保険は自動車事故や病気等に遭遇した時の経済損失を最小限に抑え、極力普通の生活を送れるようにする制度です。企業活動でも同様です。保険会社は人々の生活や企業活動等の社会全体を下支えしています。

 「人の役に立ちたい」想いで保険会社を志望、日本一と言われる会社で自己成長したいと東京海上に就職。東京海上には自由闊達の社風があり社長もさん付け、福澤先生以外さん付けの慶應義塾と同じです。先輩に対しても、言うべきことは自由に言う、その為には考え準備して実践している必要があります。

4.全国転勤で痛感 慶應義塾は素晴らしい

 転勤した先々は縁もゆかりも無い場所でしたが、そこを好きになり、地元に溶け込もうと努力しました。その転勤先ごとに三田会があります。三田会は慶應義塾のOB会です。「慶應出身」というだけで、すぐ仲良くなります。慶應義塾の「社中協力」の考えのおかげで随分と助けられました。

5.「自ら考え、発信し、行動する」「人生は挑戦にあふれている」

 東京海上の社内メッセージに「自ら考え、発信し、行動する」があります。普通部の教えである「自ら学び、自ら考え」、そして慶應義塾の基本精神である「独立自尊」の教えに共通するものがあります。時代変化と共に、世の中が求めるものは変わります。今、求められているのは「自ら考え、発信し、行動する」力です。

 一方で「世の中が変わっても、変わらない・変えてはいけないもの」もあります。それは「正しいことを正しくやる」ことです。何が正しいかを自ら考え、独立自尊の精神をもって自ら正しく行動する、正に慶應義塾の教えそのものです。

 「人生は挑戦にあふれている」これは東京海上のCMですが、挑戦は人生を面白くします。ほんの少しでも背伸びして挑戦する、そこに成長があります。皆さんには、挑戦の志をもち慶應義塾での生活を送って頂きたいと思います。

6.おわりに

 日吉射場での洋弓の実射と講話を担当させて頂きました。自分にとっても、自らを振り返り、慶應義塾の意義を改めて認識する貴重な経験となりました。機会を頂いた普通部関係各位と、一生懸命に受講してくれた31名の普通部生諸君に御礼申し上げます。皆さんのご活躍を心から祈念しています。有難うございました。

 

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