2019年度 目路はるか教室

3Aコース

「本当の事」を掴むということ、伝えるということ

昭和51(1976)年卒業株式会社 フジキャリアデザイン

髙﨑 邦雄 氏(たかさき くにお)

 いきなり変な話から入って恐縮ですが、実は今回このお話を頂いた時、最初はお断りしようと思いました。と言うのも、大学を卒業してフジテレビに入社し、報道や制作等様々な職務を経験してきたとはいえ、現場を離れて長く、しかも現在はテレビ局から一歩離れた関連会社へ出向中という立場にいるので、最新のテレビ局事情をお伝えするには適任ではないと考えたからです。ところが、「生き様を話すんだ」と言われ、それならば逆に、30数年にわたってメディアの送り手側にいた人間として、自分が心掛けてきたことを後輩にお話しできる良いチャンスだなと思い、講師をさせていただくことにしました。

 自分が心掛けてきたこと、それは一言で言えば「何が本当なのか、ちゃんと見極めよう」ということです。これを心に留めておけば、玉石混交の情報が飛び交う現代社会においても、ニセ情報にダマされたり、自分がニセ情報の発信元になるような失態を犯さずに済むはずなんです。では、そのためにどんな事に気を付ければ良いのか…そんな事を考え、知ってもらうために、今回の「目路はるか教室」は二部構成で行ないました。

 第1部は「テレビ局の中を見てみよう!」をテーマにしたフジテレビの社内見学です。その中で、「めざましテレビ」「バイキング」「BSフジLIVEプライムニュース」の3つのスタジオセットを見て回りました。テレビでは広く見えるスタジオが意外と狭くて雑然としていたり、殆ど画面に映らない置物や小物のディティールにまでこだわりがあったり、大理石調のテーブルが実は木製で美術さんが手描きで模様を描いている物だったりと、テレビ画面を通してだけでは見えてこない実態を、実際に肉眼で見て、或いは手で触れてみてもらいました。テレビ画面を通して見るスタジオセットも、直接自分の目で見たスタジオセットも、両方とも本物です。でも、見方や見え方によってイメージは大きく変わってくる。その事を知って欲しかったのです。

 第2部は「自分の言葉に責任を持とう!」というテーマで、私がフィリピンのマニラに駐在して、いわゆる特派員をやっていた頃の2本の記者レポートを題材にして講義を進めました。1本目は、記者レポートを作成するために必要なエッセンスの話。2本目は、ある事件を例に、自分が実際に現場に行き、そこで見た事を伝えるという事の大切さと、先入観を持ちすぎてしまうと、時として事実と異なることを伝えてしまう危険性がある事を説明させてもらいました。

 そして、結論として、何が本当なのかを見極めるために心に留めておいて欲しいポイントを下記の6つにまとめてお伝えしました。講義をするということに慣れていないため、どこまで理解してもらえたか不安でしたが、送られてきた感想文を読むと、概ね私の意図は伝わっていたようでホッとしています。

  ・自分が見た事は「事実」、ただし見方によって見え方も変わる

  ・色々な角度から物事を見る

  ・話を聞くときは、その人が信用できる人か良く考えて

  ・色々な人から話を聞く

  ・時には、自分が見た事、聞いたことを疑ってかかることも必要

  ・見て、聞いて、自分が「正しい」と思ったことだけを伝える

 ところで、今回のプログラムを組むにあたり、座学用の会議室の確保や社内見学コースへの受け入れ、昔のニュース素材の使用許諾やプリント等、様々な局面でフジテレビの関係各所の皆様が快く協力をしてくれました。決して私一人の力ではなく、それらがあったおかげで今回の「目路はるか教室」を無事に実施できたことを申し添えておきます。

 最後になりますが、普通部時代は学業・素行ともに決して出来の良い生徒ではなかった私に「目路はるか教室」の講師という大変光栄な機会を与えてくださった関係者の皆様に感謝致します。

 ありがとうございました。

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