2019年度 目路はるか教室

2Aコース

ツーリズム(Tourism・観光事業) 新時代へ

昭和50(1975)年卒業一般社団法人 日本旅行業協会

渡辺 泰 氏(わたなべ やすし)

 今や「旅行産業・観光産業」は誰しもが当たり前の様に楽しめる身近な産業になっています。今回の「目路はるか教室」には多くの普通部生が興味を持って参加してくれました。

 事前に多くの質問を頂戴していましたので、各質問に対してこれまでの業界経験を中心に塾生時代の経験にも触れながら説明させて頂く内容にて講義を行いました。

 本塾・法学部政治学科を昭和57年(1982年)に卒業後、私が就職先として選択した当時の旅行業界は海外旅行がブームになり始めた時期であり、特に「添乗員付き国内・海外パッケージツアー」の販売が急伸した時代でした。

 それから37年。ツーリズム業界を取り巻く環境は時代の流れと共に大きく変化しました。情報産業の急成長に伴い、現代では旅行者(個人客)が旅行会社を頼らずにオンラインにて自ら簡単に旅行手配が完了出来る環境となっており、旅行会社ではないOTA(オンライン・トラベル・エージェント)が台頭してきています。

 37年前には考えられなかった環境の変化であり、この変化はLCC台頭の航空業界、格安ビジネスホテル台頭のホテル業界においても同様の現象と言えます。

 しかしこれはまだ「1都市滞在型の個人旅行」向けへの現象でしかありません。

 今年のワールドカップラグビー及び来年の東京オリ・パラを契機に急増している「訪日外国人旅行」、「複数都市への旅行」、「教育旅行」そして「各種団体旅行」等の内容の濃い旅行の対応には旅行会社が介入しなければ成り立ちません。

大きな環境変化においても旅行会社の存在価値はまだまだ衰えていないのです。

 そして多岐に亘る業界と深く結びついているツーリズム産業は、旅行消費額の急増により日本経済にも大きく貢献しており、政府も「観光立国日本」を国家戦略のひとつに掲げています。

 今、旅行業界は「After オリンピック・パラリンピック」に視野を置いています。

 日本では5年後の2025年に「大阪万博」開催が決定しておりますので、大きな国際イベントにおけるツーリズム産業の存在価値はまだまだ重要視され続けます。

 この新しい時代の流れの中で、ツーリズム産業はいち早く旧態依然の旅行アレンジから脱却し、お客様からの多様化するニーズにしっかりと対応出来る新しいビジネスモデルが求められていくことになります。

 その将来に向けて、これからは若い方々の新鮮な発想力・企画力・行動力がツーリズム産業にとって必要不可欠と言えるでしょう。

 「旅」と言う商品は、自ら手に取って目に見える商品ではありません。

 旅行商品は旅行に参加されたお客様それぞれの価値観で評価が分かれますので、商品の企画造成そしてその販売は本当に難しいジャンルです。

 私共はこれからも生活に身近な「旅」と言う商品提供を通して、一人でも多くの方に夢と希望と喜びそして感動を与えられる旅行商品を開発すべく日々努力して参ります。

 今回の講義にて一人でも多くの普通部生が将来に向けて私共の業界に目を向けて頂ければ幸いです。

 塾を卒業して30年以上も経過しますと慶應義塾の社中協力の有難さをより一層感じています

 普通部生の皆さんも塾生としての誇りと自信を持ってこれからも頑張って頂きたいと祈念しています。

 この度はこの様な機会を戴きまして有難うございました。

 

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