2019年度 目路はるか教室

1Eコース

新時代の普通部生への期待

昭和58(1983)年卒業株式会社 三菱総合研究所

宇佐美 暁 氏(うさみ さとし)

 目路はるか教室の機会に、これからの時代を担う普通部生の皆さんと交流するという、大変、有意義な時間を持つことができました。このような機会を作ってくださった普通部ならびに世話人の皆さんに感謝します。およそ40年前に普通部の校舎で学んでいた自分自身の姿を思い返し、現在の普通部生の皆さんが、とても頼もしく見えました。皆さんは、さらに、高校〜大学と過ごしていかれるわけですが、その貴重な時間を、ただ漫然と流していくことは得策ではありません。目的意識をしっかりと持って、有意義な学生生活を送られることを願います。

1.「得意」を持つこと

 人は誰しも、得手不得手を持っています。皆さんも、得意な教科や不得意な教科、学業以外にも得意なことや苦手なことを持っていると思います。不得意なことや苦手なことがあるのは、決して恥ずかしいことではありません。全ての物事に完璧に対応できる万能人間など、存在する筈もないからです。けれども、世の中でリーダーシップを発揮している方々に共通して言えることは、「何かひとつだけは、誰にも負けない物・事を持っている」ということです。学業でなくても構いません。体育でも、美術でも、あるいは学外での活動でも、何でも良いですから、誰にも負けない「得意」を持ってください。「得意」を持つと、それ自体は元より、それが自信に繋がって、他のことも上手く廻り始める、好循環が生まれる契機となります。「得意」を持つことは、実は、あまり大変なことではありません。自分の周りで起こっていることや興味のある物事に対して、常に疑問を持つこと=他人の説明を鵜呑みにせず、常に自分自身の脳みそで汗をかくこと、それだけでよいのです。

2.「富士山」を目指せ

 「得意」を持つことは重要ですが、ひとつ気をつけなければならないのは、「専門バカ」になってはならない、ということです。皆さんが目指すべき理想形は、「富士山」です。富士山を目指すことには2つの意味があります。

(1)「富士山」は、日本一高い山です。つまり、自分の得意とすることでは、誰にも負けない日本一を目指すことが大切です。周りから、「あの分野のことなら〇〇君に聞こう」という評価を得ることができれば成功です。

(2)富士山は裾野が広いことでも知られています。自分が得意とする頂点を持ちつつ、それとは無関係の様々な事象や出来事にも関心を持ち、幅広い知識や情報を吸収してください。言い換えれば、「雑学のすすめ」です。雑学の範囲が広ければ広いほど、バランスのとれた人間形成が可能となります。

 これらのことから分かるように、将来、社会のリーダーとなる皆さんは、エベレストを目指す必要はありません。エベレストは、世界一高い山ですが、極めて峻嶮で、裾野がありません。エベレストを目指すような方々は、ノーベル賞を受賞されるような、ごく限られた「天才」です。極めて優秀な専門バカと表現することもできるかもしれません。そのような方々の中には、一般社会から隔絶した天才の境地に達している方もおられるでしょう。ところが、私達は、社会の構成員として存在しているが故に、社会で起こっている事柄に背を向けることはできない、社会を構成している多くの人々の牽引役として活躍することを期待されている皆さんは、この「社会」から隔絶してはならないのです。社会の中で何が起こっているのか、解決策は何か、その解決策を用いるためには何をしなければならないのか、日々、洪水のように溢れ来るこれらの問いに対して、俊敏に解を出していかなければならない皆さんは、就学期間を通じて、教室で様々なことを学びつつ、教室で学んだことを机上の空論として脳みそに詰め込むのではなく、それが常に現実社会の課題とリンクしているのだ、ということを忘れないでください。それが、「実学のおしえ」です。

 皆さんのような優秀な人材に、私達の次の時代を託すことができることを、とても頼もしく思います。

 

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