2018年度 目路はるか教室

3Hコース

お笑いの会社で弁護士が何をするの? 〜企業内弁護士の仕事とは〜

昭和63(1988)年卒業プロアクト法律事務所

渡邉 宙志 氏(わたなべ たかし)

 今回の授業に参加していただきいた皆さま、お疲れ様でした。そして、私の授業を選択していただき、ありがとうございました。

 小雨の降るなか、皆さんには東京神保町にある吉本興業の劇場「神保町花月」のレッスン教室に集まっていただきました。さあ、授業が始まるぞという段階で「このあと、皆さんには漫才をしてもらいます」と聞いて驚いたのではないでしょうか(中には、引率の山田先生から予告されていた方もいたようですが)。まさか、このコースに応募した時には、自分たちが漫才をさせられるなんて、思ってもみなかっただろうと思います。弁護士の仕事と関係ないじゃないかと不満を持った方もいるかもしれません。

 しかし、実は、この「漫才ワークショップ」の授業こそ、是非、皆さんに体験してもらいたかった授業なのです。感じてもらいたかったことは、「笑いのあるコミュニケーションの大切さ」です。

 皆さんは、漫才の虫食い台本を持たされ、その中でどういうボケとツッコミを入れればいいのか、どうすれば皆を笑わせることができるだろうかと、短い時間で、一生懸命考えてくれました。このような作業が、人を笑わせるという作業の根本ですし、楽しい会話をするためのコツでもあるのです。

「笑い」というのは、人の心と心の潤滑油です。笑いがなければ、どんな人同士でも、心と心がきしんできてしまいます。そうなってしまっては、友人関係だって上手に作れませんし、将来社会に出て仕事をするときにも、上手くいきませんよね。どんなにまじめな話をしているときであっても、フッとした笑い(ユーモア)を交えながら会話することができる、そんな人は、将来、どんな仕事をしたとしても最強だと、私は思っています。

 実は、私がそんなことに気が付いたのは、吉本興業に入社してからのことです。吉本興業に入社すると、会社の人たちは、まじめな会議の最中でも随所に笑いを織り交ぜながら楽しそうに話を進めていきます。そんな雰囲気に凄くびっくりしましたが、この会社がすごく好きになり、やがて、自分でも、わずかながら、そういう能力を鍛えていくことができたと感じています。それは、会社を離れた今でも、とても役に立っています。

 漫才ワークショップを体験した皆さんは、どう感じたでしょうか。感想文を拝見する限り、とてもいい経験になったと確信しています。始める前は、もしかしたら「そんな恥ずかしいことできない」と、やる気を失う生徒もいるのではないかと心配していたのですが、皆さん、本当に前向きに取り組んでいただきました。楽しかったと思いますし、私も楽しませてもらいました。今回の経験は絶対に将来に活きてきますので、何かにつけ思い出して、「あそこは、もっとこういう風にボケるべきだった」、「あそこのツッコミは思い切りがたりなかった」、「もっと正面を向いて、皆の目を見ながら漫才すればもっと笑いがとれたのに」などと後悔してみてください。それが、コミュニケーション能力を鍛えるということに繋がります。もしかしたら、この本を手に取って読んでいるのは、就職が決まり、引越しの荷造りをしている時かもしれませんが、その時にこそ効いてくる経験です。是非、何度も、思い出してもらいたいと思います。

 そのほか、授業の中では、もちろん、社内弁護士の仕事についてもお話をさせてもらいました。聞いていただいた皆さんは、弁護士の仕事には、想像していたものとは違う世界がある、様々な業務があるのだと知ってもらえたと思います。今は、それだけでも十分です。世の中には色々な仕事があります。弁護士の仕事の中でだって千差万別、そのほかの仕事だってそうです。皆さんが、将来どんな仕事を選択するか分かりません、でも、どんな仕事だって無限といえるような可能性があると思います。皆さんの選択に期待しています。

 そして、皆さんが社会に出たときに、またお会いできたら素晴らしいですね。その時は、是非、一緒に笑いながら仕事しましょう!

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