2018年度 目路はるか教室

2Iコース

モノ作りの考え方 〜最新の人工知能(AI)教材の事例から〜

昭和62(1987)年卒業株式会社スプリックス

常石 博之 氏(つねいし ひろゆき)

 みなさんからいただいた事前レポートに使われている単語の頻度や相関関係を分析したところ(これは「テキストマイニング」という古典的な人工知能のひとつです)、参加される普通部生は、人工知能(AI)について一番興味があり、またAIと自分の夢との関係が気になっていることが分かりました。そこで授業当日は、事前に用意していた授業の内容をAI寄りに変更してお話しました。

1.AIについて

 AIの歴史は長く、「Artificial Intelligence」という言葉が初めて使われたのは、1956年のダートマス会議でのことでした。ENIACというコンピュータが1946年に開発されたことが発端だと思いますが、コンピュータの演算処理能力や記憶力を駆使することでAIができるのではないかと考えられ、その技術革新の都度AIがブームになりましたが、実はその反動でAIの能力の限界が語られて廃れたりといった歴史が繰り返されてきました。

 コンピュータが得意なのは演算処理や記憶です。例えば、演算処理能力が発揮される「推論・探索」としては、チェスの全ての打ち手をコンピュータ内で「力技」で再現してから次の最適な一手を選択するといったものがあります。また記憶力を生かした作業としては、センター試験の問題で一定レベル以上が得点できることなどが挙げられます。また、近年ではインターネットの普及などより、大量のデータが電子化されて蓄積されていることがAIの進化を加速させています。

 ただ、こういったAIがただちに人間の能力を上回るかと言われると「部分的に」というところが精々でしょう。人間の知識を全てコンピュータ上に書き出すことは数十年前から作業が続けられていますが、実はまだ完了していません。また一方で、将棋の打ち手を全て検証するパターン数は、全宇宙に存在する原子の数より多いとも言われていて、スパコンでも検出しきれません。コンピュータがいかに進化したからといって、今のところ直ちに人間の全てを代替するほどではないということです。ただ一方で、AIの方が得意な領域は確実に存在します。

 また、AIの定義には注意が必要です。詳細は省きますが、簡単な家電レベルのものから、高度な画像認識レベルのものまで、さまざまなレベルのものが混在しています。

2.AI教材「eフォレスタ」について

 私が経営しているスプリックスという会社は、教育の会社で、学習塾の経営や教材の出版をする一方で、AIを駆使した最新の教材も開発しています。その一例としてご紹介した「eフォレスタ」は、AIによって個別最適化された教育プログラムをタブレット上で提供するシステムです。みなさんには「方程式の解き方」を例に、eフォレスタを何度も触っていただきました。短い時間でしたが、途中の確認問題の成否によって次に出てくる解説の内容が変わったり、また出題される問題自体の難易度が変わったりすることなどを実際に確認していただきました。みなさんの授業後のアンケートを見ても、かなり刺激的だったようです。特に理解していただきたいのは、既にeフォレスタは実用化されているということで、つまりこのAIを使って学んでいる小中学生が既に全国に大勢存在し、また経済産業省がこのeフォレスタを学校現場に導入するための実証事業がスタートしている、そういう世の中になってきていることを実感していただけたと思います。

3.やりたいこと「夢」のみつけ方

 今、夢がないからと言って焦る必要はありません。夢がないまま学生時代を過ごし、就職も「なんとなく」銀行に入っただけの私がスプリックスに転職して教育の仕事に就いたのは、ただ「強く共感した」からでした。ラッキーでした。好きだったり、共感できたりすることは得意になる可能性が高いですから、そんな自分の感覚に自然体で向き合えるといいかも知れません。

 最後になりますが、関係していただいた全ての皆さまに深謝申し上げます。ありがとうございました。

前の講師を見る

2018年度トップに戻る

次の講師を見る