2018年度 目路はるか教室

1Gコース

人間の眼を超えるセンサーで 私たちの暮らしをどう変えるか

昭和56(1981)年卒業ソニー 株式会社

市川 卓広 氏(いちかわ たかひろ)

 今回不思議なご縁から、現役の普通部生に会社の紹介や自分の仕事についてお話しする貴重な機会を頂き、本当に嬉しく思ったのと同時に半端な覚悟では臨めないと強く自分に言い聞かせ、緊張しながら当日みなさんをお迎えさせて頂きました。

 私は、このお話を頂戴してから実際に講義で紹介するテーマを選ぶにあたり、ただ単にソニーの技術を紹介するだけでなく、その技術を通じて何でもいいので一緒に考えるきっかけとなるものはなんだろう、ということを一番に考えました。そしてみなさんの身近にあって、今日的な課題、そして将来に亘ってぜひ考えて頂きたい事柄が沢山含まれていると思われるイメージセンサーを題材として取り上げることにしました。

 普段、何気なくスマホやデジカメで撮影していて当たり前と思っていても、どうしてフィルムもないのに目の前の景色を撮影することが出来るのかと改めて聞かれると、わからないことだらけですよね。難しい理屈は沢山ありますが、みなさんにはなるべくわかりやすく興味を持って頂けるような説明を心掛けました。恐らく、みなさんが仕事をされるようになるころには今よりももっと技術が進みますので、今の技術を詳しく説明するよりも、基本的な構造や、光電変換等の原理を簡単に解説し、むしろその性能が現在どこまで高度化しているのかを知って頂くということと、それが私たちの暮らしにどのように役立つのかということを考えて頂くことの方がずっと重要ですので、自分も普通部生に戻ったつもりで短い時間でしたが、一緒に議論をさせて頂きました。普通部生の好奇心旺盛で瑞々しい感覚や、すごいものをすごいと素直に感動できる心に触れることが出来、私自身も本当に幸せな気持ちになりました。また勉強やクラブ活動に毎日忙しい中、私がお願いした課題についても考えて来て下さり嬉しかったです。ありがとうございました。

 場所を変え、社内の施設では今度はそのような人の眼を超えたセンサーが捉えた映像を実際に様々な装置で体験して頂きましたがいかがだったでしょうか。捉えた映像は届けて体験することでさらに新しい価値を生み出します。その届け方も単にテレビのような装置だけではなく、VR装置など普段とは異なる機器を通すことで全く違った感覚を味わえることがご理解頂けたでしょうか。何人か体験できなかった方には本当に申し訳ありませんでしたが、機会がありましたら改めてご紹介したいと思います。

 最後のディスカッションの場ではみなさんの考えている課題にどれも本当に驚かされました。中でも「顔色が悪い」という表現を普段しますが、それをセンサー経由で捉えて診断出来たらという課題提起には、もっともだなと感心させられました。他にも食糧の自給自足問題や、自動運転がもたらす新しい交通網の整備等、沢山寄せて頂き本当に嬉しかったです。すぐには解決できない課題でも、それを考え続けていくことが新しい技術を開発したり、社会の仕組みを整えていく力に繋がっていくと私は信じています。優れた技術は良くも悪くもそれを使う私たちの心掛け次第で暮らしに色々な影響を及ぼします。今の普通部生が社会に出るまで、そして出てからもこうした課題に気付いて解決しようとする意欲を持ち続けて頂ければ暮らしは益々豊かになっていくでしょう。そうした未来を実現するのは正にこれからの社会の先導者たる若きみなさんたちにほかなりませんので、柔軟な頭で考え大いにその考えを述べて行って頂きたいと思います。その想いを支えるためにこそ技術はあるのですから。

 最後になりましたが、今回のこの「目路はるか教室」では多くの普通部生とお話しすることを通して私も普段以上に勉強させて頂くことが出来ました。参加頂いた生徒の皆さん始め、こうした素晴らしい教室をお世話下さいました諸先生方に改めて心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

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